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幕間.娘を想う母の様に

※ほぼダフネリア視点になります。

―――――――――――


■後神暦 1324年 / 春の月 / 星の日 am 09:30



「長老、ミーツェとティスが出発しましたよ」


「そうか。とは言えティスタニアがマナを取り込むために数日で扉の中に戻るのだろう?」


 スタンピードから夜神星(やしんせい)の満ち欠け1回半、準備ができたということか。



 子猫は閉鎖的な我々から見ても異質な存在であったな。

 髪も肌も瞳もブレッシングベルの様に白く、まだ幼いのに整った顔はときに子供とは思えない表情を見せる。

 そして我らとは力の根源が違い、魔法が使えないがそれに匹敵する力を振るう。



 ――そうして思い返すはティスタニアが子猫を連れてきた日のこと。



「みんなー! 戦える人連れてきたわよ!」


「*******?」


「ティスタニア! ティスタニア!」


「ティスタニア? メルミーツェ……メルミーツェ**、****」


 我らには戦力が必要だったとはいえ、言葉も通じない者をどうするのかと呆れたものだ。

 しかし、戸惑う表情や意思疎通をしようするしぐさに敵意はないと安堵もしたな。



 ~ ~ ~ ~ ~



「ティスタニア、子猫の様子はどうだ?」


「すごいのよ! ミーツェってばもう会話もできようになってきたのよ! まぁたまに言葉は変だけど」


「早すぎないか? まだ夜神星の満ち欠け1回も経っていないぞ?」


「そうなのよ! よく分からないけどミーツェが持ってる光る板のおかげみたい。

 それに蜜集めも手伝ってくれるし、襲ってくる獣も倒してくれるのよ! でも魔法は使えないみたい」


「魔法が使えないだと?」


「うん、それどころかマナすら知らなかったみたい」


「あり得るのか? 戦うための魔法が使えない者がいるのは珍しくないが、それでも生活に魔法は必要だ」


「うん、でもミーツェの近くに浮いてる大きな魔石みたいな物が助けてくれるみたい。ミーツェはアルマって呼んでたわ」


 初めは信じられなかった。

 しかしその後に他の者にも話を聞き、戦う力があることは判った。

 協力を得られれば、スタンピードが起きても多くの同胞を失わずに済むかもしれないと希望をもったな。


 こちらの願いを伝えたときも子猫は穏やかに力を貸してくれると言い、我らのために花を守る提案までしてくれた。


 私としては共に戦ってくれるだけで十分だったが、それ以上に我らのことを考え行動してくれた。

 想えばあのときにブレッシングベルを明かすことを決めたな。



 ――そして星喰いの当日…



 正直、私は絶望した。今までのスタンピードと規模も魔獣も違った。

 我々が退けたのは恐らく他で数を減らした魔兎(まと)魔猪(まちょ)が十数頭流れてくる程度。

 森でもごく稀にしか見ることのない魔狼が群れを成して現れるなど思っていなかった。


 それでも怯まず戦う子猫に私も含め妖精族が奮起できたのだと思う。

 それに子猫が事前に用意した囲いや策も同胞を亡くさずに戦いを終えられたのだろう。


 しかし最後の魔狼……あれは変異種だったのだろうか?

 魔法をも躱す俊敏さ、多少の攻撃を受けた程度では怯まない頑強さ、何より影に潜む力。


 ――あやつだけで妖精族を蹂躙することができただろう……



 満身創痍ではあったが子猫は魔狼を屠った。

 きっと同じような死線をくぐり抜けてきたのだろうと思ったが、戦いが終わり子猫は震えていた。


 私は思い違いをしていた……きっと我らのために自らを奮い立たせていたのだろう。


 子猫は「大人」だと言うが見たところ産まれて十数年程度、数百の年月を生きる私からしたらまだ子供。

 そんな子供が魔獣から我らを守ったどころか、今度は可能性とはいえ魔石に関わる脅威からも守ろうとしている。


 3年前、救世主は現れなかった。

 神託とは違うが子猫は我らにとって救世主だったのかもしれないな。


 頼もしくは思うが無理はせず危なくなったら戻ってくるのだぞ、我らが”娘”。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



「――……っぶぇっっくしょんっ!!」


「ミーツェ……年寄りみたいよ?」


 正解、年寄りとまではいかなくても本来はもういい歳です。


「誰かが噂してるのかもね~」


「なにそれ?」


「なんでもなーい。そろそろ休憩終わりにしていこうか」


 ティスタニアがサックに戻ったのを確認し、almAに跨り再び進み始める。


 魔石について調べるけど野菜の苗も手に入るといいねalmA!

 僕は浮かぶ多面体に抱き着きながら拳を上げる。

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