閑話.温泉採掘
■後神暦 1324年 / 春の月 / 星の日 am 11:00
「ミーツェ、ここって本当に内側なのよね?」
「そうだよ、だから島があるって言ったのに僕のこと嘘つきって言ったよね?」
「んぐ……ごめんなさい……」
ブレッシングベルのお守りをもらってから数日、僕とティスタニアは僕が目覚めた島にきていた。
「あの扉って本当に不思議よねぇ、さっきは草原だったのに今度は山じゃない」
「ここにいた半年で色々と探索してピン刺してきたからね。
この島って場所によって植生とかもバラバラなんだよ」
今日は銃弾に必要な元素値を貯めるために鉱石を掘りにきた。
ここには硫黄鉱が多い場所だけどティスはどんな反応するかな?
「ミーツェ……なんか変な臭いしない?」
「硫黄っていってね、水とかと混ざると臭いのする空気みたいに見えないものが出たりするんだよ」
防護マスクを被りながら僕は説明をする。
「あははっははははっ!! なにそれ~!」
『臭いが濃い空気を吸い過ぎると体に悪い影響があるかもしれないんだよ。はい、これティスの分』コォー
「……あたしも被るの……?」
心底嫌そうなティスにサムズアップで応える。
それにしてもすごいよね、製造所。ティスサイズの防護マスク作れるとか本当に便利。
毒性のある気体は魔法でどうにかなるのかもしれないけど、マナが切れたらここで補充できないだろうからティスにはおとなしく被ってもらおう。
『almA、毒素が強い場所は教えて』コォー
almAが先行し移動先になり得る範囲をうろうろと巡回する。
『ここで何するの?』コォー
『黄色がかった岩を掘るんだよ。武器を作るのに必要なんだ』コォー
巡回から戻ったalmAと協力し、硫黄鉱を掘ってはリサイクル施設に投げ込むを繰り返す。
――!!!!!!
順調に採掘できていたと思っていたが、almAの近くに湯気が噴き出す。
『ティス下がって!!』
……almAが警告しないってことは大丈夫ってことだよね
――もしかして温泉?
『almA、成分分析して』
部隊編成”スミントス”セット……――Ready
スミントスのプロフィールは元地質学者、鉱物関連にも明るい。
分析結果は問題なく、温度は40°前後、入浴に最適温度だった。
『almA! 穴を掘って! あとこのお湯を引き入れるの手伝って!』
『え? え? 岩は掘らなくていいの!?』
ティスは急に目を爛々とさせる僕に理解が追いつかないようだが構わない。
『いいのいいの、今日の採掘は終わり!』
本来の目的を捨ててalmAの力も借りた作業速度は凄まじく、小一時間が過ぎるころには簡易的な露天風呂が出来上がっていた。
『できたー! じゃあさっそく……』
『ミーツェ!? なんで脱いでるの!!?』
「お風呂入るんだから脱ぐでしょ普通。
マスクも邪魔だね、ここは硫黄鉱があることから離れてるし問題ないない」
『ここ外よ!?』
「妖精族だって湧き水のところで体洗ってるでしょ。あれも外だよ?」
『あれはいいのよ! 葉で隠してあるし!』
「もう、いいからティスも入ろうよ。どうせここ無人島だし、almAに警戒もしてもらってるし」
――転生して1年、元々の性別もあって恥じらいなどない。
初めこそ動揺したがティスの体も今となっては姉妹を見るようなものだ。
問題などない、ないのだよ。
~ ~ ~ ~ ~ ~
「ふぅぁあぁぁぁ~……」
拠点にお風呂はあるけど”露天風呂”って気分も最高だよね。
「どう? 気持ちいいでしょ?」
「うん……」
今度ここも整備したいなぁ、小屋とか建てれたら良いよね!
夢が膨らむな~。
小さな目標みつけちゃったねalmA。
僕はホクホク顔で浮かぶ多面体をお風呂で抱きしめる。




