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葬儀
椛は雲上へ転勤した。
もう苦しくはないらしい。
長いあいだ、食べたくても食べられなくて、
もどかしかったのだろう。
時折、口をもぐもぐしていた。
雲の上には私の子供たちが何匹もいるし、
椛の前任の、よく似た黒のボス猫もいる。
面倒見のいいボスだったから、きっと椛のことも、
良くしてくれるだろう。
もっと一緒にいたかったけど。
贅沢を言いはじめたらキリがない。
奇跡の出会いを得たことをただ感謝したい。
余談だが。
葬儀会社に出張葬儀の依頼の電話をした時に。
うっかりボケてて。つい癖で。
言ってしまった。
「いつもお世話になっております」
葬儀社相手に言う言葉ではない。
火葬車で駆け付けてくださった葬儀担当者さんは、
なんと、三年前に別の子を依頼した時と、同じ人だった
この人の応対がよかったので、以来リピーターになっている。
「お久しぶりです」から始まる葬式。
安心してお任せできた、良いお式だった。
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