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末期3
隔離扉をそっと開けると、薄暗がりの中に椛がいる。
巣の寝床から頭もあげない。
私の声も、もう聞こえてないかもしれない。
それでも。
「愛してるよ」と、朝も夜も囁いている。
迷惑にならないよう小さな声で。
気持ちが届いても届かなくても、どちらでもいいのだ。
言いたいから言っている。
椛は小さく、口をもむもむ動かして私を見る。
もう鳴くこともできないほど弱っているのに、
瞳は何も映せてなさそうにみえるのに、
「そんなこと知ってるよ」と、
返事をしてきている気がする。
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