ばりょばりょ伝説
猫様は爪を研ぐ。
本能だし。若いんだし。元気のバロメーターだし。
研いでくれるのは良い。とても良い。
しかし。
どいつもこいつも動物なのに値札が読めていて、
高いものの順に爪で裂いていくのは、いかがなものか。
蓮様も爪を研ぐ。
叱ったことは一度もないけど、できれば研がないでほしいものの在処は、
なぜかわかっている。
ちら、と私を見てから爪を出す。
爪を構えてから、また私を見る。
いいの?研いじゃうよ?
うふふ、と含み笑いをしていそうな空気感で、
私をからかっている。
そして私が寄ってきて、できればこれは研がないでほしいなぁ、
と言いながら抱っこするのを待っている。
抱っこをすると、嬉しそうに腕の中でクネクネコロコロする。
たぶん爪研ぎパフォーマンスは、彼なりのお遊びなのだろう。
抱っこをしないでいると、どうなるか。
「ドレイのくせちて言うこと聞かニャいなんて!」
と怒られて、研がれる。
おかげでお気に入りのカーテンが細い短冊に化けた、
蓮様の、ばりょばりょ伝説。
せっかく蓮様が作ってくださったことだしと思って、
カーテンは今日も、そのままで使っている。
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