東北弁
爺様が来店された。
おらにもよぐ聞ぎどれねぇほど訛ってだがら、
うんうん言っで聞いでだどもな。
最後まで何言われでだが、わがんながっだっべ。
んだども爺様、喋るだげ喋っだら気ぃ済んだらじぐっでな。
そのまんま、うんうん言っで、機嫌ええ顔さして帰っでっだだよ。
はぁ、結局おら、爺様が何の用事で店ざ来だが、
わがんねぇまんま、爺様を見送っただよ。
早い話。
東北弁で一生懸命に何やら話すご老人が、
あんまりにも可愛くて。
見惚れて、ただ相槌を打っていた。
ご老人はそれだけで用がお済みだったもようで、
機嫌よく帰ってゆかれた。
それは、いいんだが。
私の仕事は、お帰りになられたお客様の、
ご用と結果を記録せにゃならんのだ。
「はぁ、可愛がっだっべ」
の一行で済ませた報告書なんか送信した日にゃ、
本部から串刺しで火あぶりにされること間違いない。
しかし、わからんもんは、わからん。
次のお客も控えてることだし面倒くさくなった私は、
テキトーに捏造報告をあげて送信しといた。
あれから一ヶ月が経つ。
いつ串刺しにされるかとビクビクしているが、
いまだに刺されずに暮らしている。
皆の衆、東北弁には気をつけろ。
あれは、可愛い……。
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