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文鳥の傘
雨が降る。
会社の傘立てに透明なビニール傘が乱立する。
どれが誰のかわからなくなりそうで。
盗難が発生しそうで。
私は自分の傘の柄に猫の絵をラクガキしている。
先日からこの傘の柄のなかに、二羽の文鳥がいる。
黒い頭、白い頬、灰色の羽根、くりくりの瞳。
本物そっくりの人形が、柄にちょこんと止まっている。
盗難防止札なのはわかるのだが、
あんまりにも可愛くて、悲鳴あげそうになる。
先日トイレで年配女性が話をしていた。
どうやら片方は文鳥の持ち主。
もうひとりが文鳥のファン。
文鳥をホメられて照れながら、
あの文鳥はメルカリで三百円だったのだと話していた。
せめて写真を撮らせてください。
と話しかけたかったのだが、他部署の人だったので。
不審者すぎるので止めておいた。
雨が降ったらまた会えるだろう。
ピッピちゃんとチッチちゃん。
人んちの子に勝手に名前をつけて、
心の中で愛でている。
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