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ピザ強盗
真夜中にインタホンが鳴った。
玄関カメラをのぞいたが誰もいなかった。
自慢じゃないが貧民窟である。
治安は悪いがカネもないから襲う価値がない。
一回間違えて施錠なしで朝を迎えたことがあるが、
強盗どころがイタズラでドアあけにくる輩もいなかった。
良くも悪くもプチ・スラムである。
そんな地域で、夜中にインタホン。
強盗か?
宅配などを装って、ドアあけた瞬間に押し入ってくる、
よくあるアレか?
私は身構えた。
この地域は110番すれば五分でパトカーがくる。
以前あんまり酔っぱらいが煩かった時に試しに呼んで、
実証済みである。
片手にスマホをスタンバイして、
インタホンに応える。
「どちらさま?」
すると廊下のむこうに去りかけた足音が戻ってきて、
インタホン前に立った。
「ドミノピザです。お待たせしました!」
制服を着ていた。一人だった。
たぶん本物の迷子だろう。
家を間違えたとわかって、とぼとぼ帰っていった。
真夜中の誤配達。
あと一歩で警察を呼ばれていたことを、
彼は知らない。
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