電柱には名前がある
電柱に名前があるのをご存じだろうか。
これは電話用の電柱の話である。
電柱には二種類ある。まずは電力柱。大手電力会社の送配電事業社が所有していて、背が高い。数が多い。電気を送るためのもの。もうひとつが電信柱。NTTが所有していて、電話や有線インターネットの信号を送るためのもの。ポリバケツみたいな変圧器がついてるのが電力柱。でっかい羊羹みたいなクロージャがついてるのが電信柱。電柱には名札と持ち主が書いてあるので、それで見分けていただきたい。
すべての電柱には名前があり、各官公庁のデータベースにも載っている。柱が撤去されるまで半永久的に使われる名前である。これがじつは、柱を立てるときの社内の設計担当者が、個人的な趣味でテキトーに名付けている、と、関係者の知人が言っていた。
たいていは無機的で、地名に番号つけたような名前が使われる。だが、たまに変なのがある。自分ちの子の名前をもじったんじゃないかと思うようなのや、その他もろもろ。よくよく見てると稀に「猫」の文字が使われてる柱もある。
電信柱は、道路工事の時には臨時で別の道路に移設されることもある。
たまたまその工事現場付近で電話線の敷設があり、技師さんたちが現場に行くと、設計図にある電信柱がない。どこから電話線を引き込みゃいいんだ、と、ツルハシ担いだ技師さんたちは、工事の依頼主である旧デンデン公社の担当部署にクレームを入れる。
技師「猫、どこだ」
担当「・・・は?」
技師「だから猫だよ猫。俺の猫。猫ノ五十六番。どこ行った」
担当「知らんがな」
技師は馴染みのオヤジだったがついに気がふれたかと思った、と。
某担当者が酒の席で嘆いていた。
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