超高級住宅地
これも昔のことである。
東京郊外の新興住宅地。
某大手生保の重役が住んでいるのは知っていた。
地図で見ると普通の団地群にみえた。
なんで年収ウン千万な家庭が団地に住むんだろう、
懐古趣味なのかな、と軽く流していた。
今日、たまたま行って、理解した。
都心まで20分程度のその地にあったのは、
直径一キロ以上の巨大な、
たぶん億いってる豪華マンション群だった。
超大型ショッピングモール、元は基地だった大公園、
もちろんマンションはどれも緑てんこもりで、
区内というのに森林浴ありありで。
まさに現世の天国だった。
マイナスイオンの吸いすぎでフラフラしながら歩いていたら、
目的の建物が遠すぎて。
到着する前に、トイレに行きたくなった。
なんてこったい。
あたりを見回したら樹々のあいだに、
よく管理されて清潔そうな、公衆トイレまであった。
目的地に着いた私はお客様へ言った。
「すごいですね。営業のためにトイレまであるなんて!」
お客様は、ため息をついた。
この世には営業以外にも住宅地を訪ねる人はいるんだよ、と。
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