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高鼾
真夜中に目が覚める。
すぐそばから地響きがしていた。
南海トラフかな、と寝ぼけた頭で思ったが、
すぐ頭がはっきりした。
蓮だった。
人の枕のそばの猫ベッドで、高鼾をかいていた。
元、野良である。
さんざん人間にいじめられた。
うちにきた時には人間なんて大嫌いだった。
二十四時間ずっと、全身から棘を出して、
緊張して威嚇してシャーシャーしていた。
死にもの狂いで体当たりして脱走しようとしていた。
あれから二年が経った。
あの蓮が、無防備に腹を出して、
夜光灯にぼんやり照らされた猫ベッドで、
鼾をかいていた。
神様ありがとう。
わけもなく涙が出て、暗闇で震えて泣いた。
この小さな命が私のもとへ流れ着いてくれた奇跡が、
愛しかった。
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