神の記憶
我家の蓮は神である。
猫とは思えない素晴らしい頭脳の持ち主である。
近所に新しい動物病院ができたので、
涼しくなったら行ってみることにした。
医者が診断しやすいように、
まったく効いてない漢方の投薬をストップした。
蓮は、不満そうだった。
薬がではなく混ぜ物の、とろリッチが食べたくて。
とろリッチは出てこないことをすぐ理解した。
そして、めいっぱい不満そうな顔をした。
なんて頭がいいんだろう。
そんな蓮に、ニボシをあげてみた。
とても気に入ったらしい。
以後、明け方になると私の頭をたたくようになった。
たたけばニボシが出ることを、一瞬で理解した。
なんて頭がいいんだろう。
眠たすぎて泣きながらニボシをあける、
明け方の私。
近所のスーパーのポイントがたまったので、
ウエットフードを買った。
蓮は、これからはニボシより高額なオヤツが出ることを、
一瞬で理解した。
明け方、私の頭をたたく手が、
とても嬉しそうだった。
なんて頭がいいんだろう。
ああ、それなのに。
おやつの支度をするあいだ待ちきれなくて興奮して、
私のすねを噛むのは、やめない。
痛いよ、やめてよ、と言うと、ちょっただけ離れる。
そして私の目が猫皿に移ったとたんに、
また噛む。
何度言っても「ママを噛まないでね」だけは覚えない。
自分の利益になることは一瞬で覚えるのに、
人間の利益になることは一切、記憶に残らない。残さない。
悪い意味でも頭がいい。
誰だ、ここまで甘やかしたのは。
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