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亡くした猫
お盆である。
はじめて猫を亡くしたのは十年以上前だった。
その子なしにどうやって生きたらいいのか分からなくて。
なぜ一緒に死ねなかったのかも分からなくて。
途方に暮れたまま新盆を迎えた。
霊感はゼロである。
それでも、できるかぎりのことをしたかった。
迎え火を焚きまくって召喚に努めた。
交霊術かなにかとカンチガイしていた。
その夜。
洗面所で歯を磨いていたら、足元で。
毛がふわっとなった。
猫が甘えて足にスリスリする感じ。
神様が私の勢いに負けたのか、
ただの気のせいだったのかはわからない。
自分では確かに感じたと思っている。
最初で最後の、、お盆の奇跡だった。
病気で大人の野良ばかり保護していたので、
うちの子になる猫は短命が多かった。
虐められて命がけで生きてきた野良たちが、
うちで氷の心を溶かしていくのを見るのが好きだった。
たくさん亡くした。
でもお盆の挨拶を感じることができたのは、
最初のあの猫だけだった。
猫を亡くしたおかげで、自分の死が怖くなくなった。
死んだら猫たちに会えるから。
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