裸の王様 #石丸伸二
最寄り駅の前に、某候補者の宣伝カーがいた。
J民党の巨大看板を掲げて名前を連呼していたが、
本人もいないし聴衆もゼロ。みごとにゼロ。
石丸街頭演説の凄まじい大観衆を見慣れた私の目には、
異様な寒々しさに映った。
ここまで人望も実力もないのに、
組織票だけで当選できる国って、ホラーだな。
うげぇ、な顔で通りすぎようとしたら、
ビラ屋だけは配備されていて、一枚、握らされた。
突っ返すのも大人気ないので握ったまま電車に乗った。
都ファのビラ。
目的地で降りた。
運のいいことに遠くから石丸氏の名を連呼する拡声器が聞こえた。
テンション爆上がりで私は走って追いかけた。
次の演説地へ向かう途中だったのだろう。
おそらくは石丸氏が乗っている、ファンは見慣れた通称「初号機」が、
法定速度で去っていった。
私は両手をブンブンふりまわし、今夜もボラしにいきます、と叫んで、
後姿へ声援していた。
初号機が見えなくなってから気がついた。
こともあろうに私がふりまわしていた手には、
握りしめたままだった、都ファのビラ。
えーと。
これじゃまるでアタマの弱い可哀想な人である。
一番寒々しかったのは自分だったという…。
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