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黒の肉球

出会ったのは去年の秋の、会社の前の公園で。

かわいい顔して甘えてくるから抱っこしたら、おでこスリスリされて、運命を感じた。


椛は野良猫だった。

10年、お外を歩いてた。

公園の街路樹の茂みや工事現場で、餌やりさんに守られながら、怖い思いもしながら、この足で歩いてきた。

保護してからよく見たら、肉球は固く白くヒビ割れていた。

肉球クリーム塗ろうかとも思ったが、悪い添加物でも入ってたら嫌なので、見送っていた。


しばらくしたら、肉球が柔らかく艶々になってきた。

体も家猫仕様になってきたんだな。


時々は工事現場の風が懐かしいかもしれないけれど。

きみがアスファルトを歩く日はもう来ないんだ。

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