表参道の詐欺師
ファイナンシャルプランナーであることはどこででも言っているので。
たまに、変な人が沸く。
去年、某SNSから連絡をとってきたのは、30才ぐらいの坊やだった。
話したいことがあると言われて表参道のスタバを指定された。
表参道に用があったので、ついででよければと会ってみた。
坊やが持ってきた話は、私を投資詐欺にかけようとするものだった。
いわゆるポンジ・スキームとよばれる古典的な詐欺。俺にカネを預ければ銀行や証券会社より儲けさせてやるよと言い、最初ちょろっと儲けさせて信用させてから有り金全部を巻き上げるやつ。
話の冒頭三分だけで詐欺なのがわかった。あとは騙されたふりをして、好奇心で話を聞いた。本物の詐欺師に逢えるチャンスなんて滅多にない。自分も元は営業だったので、他人の手口はすごく気になる。参考にして真似を、じゃなかった、勉強して自己防衛をしようという学術的な好奇心である。
坊やは投資話をとうとうと調子こいて語った。私はヨイショをしまくって良い気分にさせ、手口をさらしてもらった。だが。私もあんまり頭のいいほうではない。というか演技力があるほうではない。つい思ってることが顔に出る。口にも出る。こうした詐欺によくある、破綻した理論を勢いだけでまとめた論調やら前提の壊れたグラフ資料やらを見て、オブラートに包んだつもりが本音ダダ洩れの言葉を口にしてしまう。半笑いを浮かべつつ。
「これ、どんな人が買うの?」
※訳:どんなマヌケならこんな安っぽいテに引っかかれるの?
さすがに坊やもネタが割れてることに気がついたらしい。
しょげるかなぁと思って様子を見てたら、坊やは開き直った。
「誰か良い人紹介してくれませんか。売上の30%をバックしますよ」
同業者と思われたらしい。失礼な。
さすがにテーブル下で彼の足をけとばしそうになった。
坊やは駅まで紳士的に私をエスコートして見送ってくれた。
改札で、ばいばい、と手を振ったら、ばいばい、と振り返してくれた。
帰りの電車でSNSを見たら、坊やのアカウントは消えていた。
面倒だから警察呼んだりしないんだけどな。
こんなふうにビクビク生きなきゃいけない上に、私のようなオバハンには馬鹿にされ。
詐欺はコスパが悪いんだ。
働け、若者。
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