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椛の門
椛を亡くしてから、二ヶ月ほどが経った。
彼と初めて出会ったのは会社の門。
暗がりから飛び出してきた姿を、今も覚えている。
もう一度、会いたくて。
毎晩、会社の門を見ている。
奇跡は二度は起きないことを、
わかっているけど、あきらめられない。
いくつもある柵状の門扉。
一番端の金属製の柵の隙間から、
彼は出てきた。
私をみつけて、嬉しそうに飛んできてくれた。
その扉にしがみついて奥をみつめる。
夜闇は無人。
人が通るための場所ではない何かの機械類と雑草が茂る。
何度も、何度も、同じ闇をみつめてきたけど。
今夜も、誰もいなかった。
誰も。
最近ますます、会社が嫌いになりつつある。
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