鬼
椛の体調が悪化して以来。
仕事中、気を抜くとうっかり無意識に、
帰宅してしまいかねない精神状態だった。
ふらふらっと夢遊病患者のように。
有給はとうに尽きていた。
なにより椛自身が望んでないから、帰れない。
なので自分を会社に足止めするため、
狂ったように仕事した。
大昔やってたレースを思い出し、
サーキットを走るノリで。
ふと我に返ると、とんでもない仕事量。
同ランクの同僚の、1.8倍程度を片付けていた。
人ひとり分の人件費で1.8倍の収穫を得られるのだから、
上層部としては嬉しいようで。
最近、お偉いさんの目が優しくなってる気がする。
椛が逝った今、仕事のペースを元に戻したいんだが、
なんとなく戻しづらい空気感があって。
肩こりに悩まされながらも優等生をやっている。
成績を褒められると、妙に苦い。
名誉もお金も世界平和も何もいらないから、
私は椛が欲しかった。
愛なんて、そんなもんだろう。
エゴの塊。ちっとも尊くない。
地球が真っ二つになろうと猫さえ幸せなら、
二つでも三つでも好きなように割れてりゃいいじゃん、と、
腹の中では思っているよ。
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