12.四周年のお祝い
「それでは、後宮四周年をお祝いして。乾杯!」
「かんぱーい!」
リーダーの掛け声とともに、楽しい宴が開始された。テーブルの上にはおいしそうな料理たちが所狭しと並べられている。
「わあっ、すごい。今年は超豪華だね~。」
「ふふっ、みなさんはわたくしの希望でもありますから。今日くらいは、たくさん贅沢していってくださいね。」
「わーいリーダー大好き!」
「あっ、そっちのお皿取ってくださーい!」
久しぶりの全員そろってのお祭り騒ぎ。それに今年は料理も豪華だということで、ヨルギたちは目に見えてはしゃいでいた。あちらこちらできゃあきゃあと、楽し気な悲鳴が上がる。
「リーダー見て見てこの技!最新なの!」
「本物の幼女から習ったんだから。やっぱり、現場を見ることも大事よね~。」
「まあ、素敵。わたくしもこっそり練習しようかしら……。」
そうやってみんなで楽しくパーティーをしているところに、急に部屋のドアが乱暴な音を立てて開いた。後宮のみんなはすでに全員ここに集まっているから、仲間以外の誰かなことは明らかだった。一体誰だろう。ヨルギたちはみんな、きょとんとして入り口のほうに注目した。そこには入り口の四角い空間を切り取って、これまでと同じように横暴眼鏡が、ただし今回は若干呆然とした様子で立ち尽くしていた。
「……なんだ?この地獄のようなありさまは……。」
「あっ、おじゃましてまーす。」
愛想よく挨拶したヨルギたちをひと睨みすると、眼鏡は奥のほうに座るリーダーに救いを求めるように視線を向けた。
「あ、お帰りなさいませルークス様。今日は後宮設立四周年ですの。そのお祝いに……。」
それを受けてリーダーが、室内のお祭り騒ぎの様子を指し示して説明した。
「四周年って……。後宮は解体したはずだろう。」
眼鏡は自分の妻のはずの女のマイペースな言動に、明らかに困惑顔となって言った。
後宮は確かにあの日解散させられた。しかしヨルギたちは諦めなかったのだ。今ではみんなそれぞれの生活をしつつ、各自都合がつく時間をつくっては朝練や夕練をこなしている。以前よりも練習時間はぐっと短くなってしまったが、それでもみんな諦める気はこれっぽっちもなかった。志半ばで引退に追い込まれてしまったリーダーのためにも、自分たちはできるところまで努力しようと一致団結したのだ。
そしてそれはリーダーも同じだった。結婚によって引退に追い込まれた後も、彼女なりに密かにヨルギたちを応援してくれていたのだった。彼女がリーダーを続けてくれていたから今のみんながある。彼女がリーダーを続けてくれていたから、今年のお祝いは彼女の家で盛大に執り行うことができたのだ。彼女の家というのはつまり、邪魔な眼鏡もついてくるということだけれど。
「そういうわけで、今日はみなさんとパーティーなんです。ルークス様もご一緒にいかがですか?」
「えーっ、リーダー。今日は後宮のお祭りだよ?」
「ロリコンでもない男は立ち入り禁止でしょう。」
みんなから次々に文句が湧き出る。これまでの妨害の数々といい、特にリーダーを引退に追い込んだ男とあっては、ヨルギたちの心証は最悪なのだ。
百名余りの盛大なブーイングを受けているというのに眼鏡は平気な、いや怒りで震えた顔をして、まるで自分の家に帰ってきたかのように、いや実際自分の家に帰ってきたのだけど、今度こそ正当性を持ってそのパーティーの中に、当然の権利とともに我が物顔で堂々と踏み込んできた。
「なにが立ち入り禁止だ。ここは俺の家だ!お前ら全員出ていけ!」」
「ひどーい!」
「横暴!」
「眼鏡!」
「うるさい!今後一切俺の妻に関わるな!」
みんなを追い出そうとする横暴眼鏡と、それに対抗するヨルギたち。リーダーはなんとか眼鏡を押さえようとしているが焼け石に水だ。後宮四周年記念のパーティーはこれまでにないほど大混乱の様相を呈した。
このようなロリのロの字も知らないような素人から執拗な妨害に遭うのも珍しいことではない。しかしヨルギたちは、自らの信ずるロリ道を愚直に守り通す。なぜならそれがロリのエースを目指す者たちのプライドでもあるからだ。
エース・オブ・ロリータへの道は、かくも険しいものなのだ!
おわり