第二十六話 SAY AI
弥生から愛について教わった強子。
さらに気になる点を質問すると、弥生の様子が変化して……?
どうぞお楽しみください。
自分の事より相手の事を思いやる気持ち、か……。
『四神相応流』を広めてじじいに楽させてやろうとか思ってる、この気持ちも愛って事なんだな。
間違ってねーじゃん俺!
何でこんな術かけられなきゃいけねーんだよ!
くっそー、何か腹立ってきた。
「どうかしましたか? 依谷さん」
「な、何でもないです……」
弥生先生の顔見たら怒りが吹き飛んだ!
やっぱすげーな愛って。
「何か疑問があるなら、私のわかる範囲で答えますよ」
「あ、その、えーっと」
あ、そうだ。
「俺、友達とか先生に愛の事を教えてくれって頼んだらメチャクチャ驚かれたんですけど、何でかわかります?」
「……それ、もしかして、男の人にも聞いた……?」
「あぁ、はい。男にも女にも」
「……あぁ……」
すごい深い溜息!
やっぱり俺やらかしていたのか!?
「……あのね、愛にはもう一つ大きなものがあって、その人達はそれと勘違いしたんだと思うの」
「まだあるんですか? それはどんな愛なんですか?」
「……」
あれ? 黙っちゃった。
顔が耳まで真っ赤になって、何か恥ずかしい事なんだろーか。
「……そ、それはね、せ、性愛って言って……。えっと、男女が子どもを授かるために行う行為なんだけど、それはお互いの愛情を確かめる意味もあって……」
「へー……」
そういや小学校の時に、何がそんなの教わった気がする。
精子とか受精とか、何かそんなのだったな。
「ただそれには強い快楽を伴うというか、欲望が高まると発散せずにはいられないとか、そういう側面もあって……」
「そーなんですか……」
そんなの俺はなった事ねーからわかんねーけど。
それが慌てるのと何の関係があるんだろう。
「だから、依谷さんみたいに魅力的な子から『愛を教えて』って言われたら、その欲望の方が先立っちゃって、聞かれた人は戸惑っちゃったんじゃないかなぁ……」
「成程……」
そんな強い欲望に繋がる愛、ね。
愛ってのにはそんな側面もあるのか。
あー、やっぱりめんどくさーや。
「と、とにかく、今の依谷さんは、自己愛と他者愛のバランスを取る事だけ考えて、ね?」
「わかりました」
「それと無闇に愛について人に聞かない事。またわからない事があったら私が教えてあげるから」
「ありがとうございます」
「……是非他者愛を身につけて、『他の人と道が違う』なんて簡単に切り捨てない人になってもらえたら、私も嬉しいわ」
「……はい!」
目の前のモヤが切り開かれたような気がして、俺は晴れ晴れとした気持ちで頷いた。
「じゃあ今日はこれで解散しましょうか」
「え、あの、でも……」
愛について教えてはもらえたけど、それとは別にもう少し一緒にいたい……。
「私、これからラーメン食べに行くけど、依谷さんはもう食べられないでしょう?」
「う、あ、はい……」
ま、まだ食べるんだ……。
一体食べたものはどこに消えてるんだ……?
「じゃあまたね」
「……はい……」
愛以外にもわからねー事ってのは世の中にはいっぱいあるんだなー……。
そんな事を思いながら、俺は弥生先生の後ろ姿を見送った……。
読了ありがとうございます。
性愛は愛情の一つである事に間違いはないのですが、本能的な欲望と強烈な快感に結びつきますから、トラブルの元にもなりがちです。
強子、修行のしすぎでまだそんな世界は知らないままですが……。
次話もよろしくお願いいたします。




