第二十三話 食いしんぼ
いよいよ弥生と街に繰り出す強子。
しかし武道一辺倒だった強子は右も左もわからない。
さてどうなる事か……?
どうぞお楽しみください。
えっと、無事に弥生先生と合流できたけど、この後はどーしたらいーんだ!?
こんな事なら、ウサ子の誘いに、もっと乗っておくべきだったなぁ……。
カラオケとかゲームセンターとか、ボウリングとかショッピングとか、色々誘ってくれてたのになぁ……。
……今更言っても仕方がない!
はっ! そうか!
こんな時こそ玄武の型の理で……!
「せ、先生、どこ行きたいですか?」
先手を渡して、受けに回っていると見せかけて、必要な時に手を見せる、だったな!
じじい! 信じてるぞ!
「そうね……」
弥生先生は何かを考えている。
考え込んでる弥生先生の横顔、ずっと見てられる……。
「そうしたら」
くぅ〜
「?」
「……」
弥生先生の言葉を聞き流すまいと集中していた俺の耳に、子犬がうなるような音が聞こえた。
今の音って……。
「……弥生先生、お腹空いてるんですか?」
「……ちゃんと朝ご飯は食べてきました。なのでそれは私のせいではありません。お腹が減るのは普通のことなので」
まだ朝の十時なんだけど……。
弥生先生は消化が早いのかな?
「じゃ、じゃあご飯食べに行きます?」
「……そうね。ではこの先のトンカツのお店に行きましょう」
「美味しいんですか?」
「衣は薄いながら歯応えがしっかりとしていて、かつ赤身肉を丁寧に処理してさっぱりしつつ柔らかさも両立させるという職人技が光り、醤油や塩との相性が」
「わ、わかりました! 行きましょう!」
「はい、こっちです」
すげーパワー……。
こりゃ、相当その店のトンカツが好きなんだろうなぁ……。
先に立って歩く弥生先生の後ろ姿を見ながら、意外な一面に戸惑ったけど、何だかわくわくする気持ちも感じた。
「ふぅ……。やはりこのトンカツ屋は侮れませんね。脂身の少ない肉は言うまでもなく、羽釜炊きのお米とお新香が絶品です」
「はい、美味しかったです」
確かに衣はサクサクで、肉は柔らかくて、旨いトンカツだった。
ただ、弥生先生がダブルトンカツ定食を頼んで、ご飯を三杯とキャベツを二回おかわりしたのにはびっくりした。
俺も稽古後にはそんぐらい食うから、まぁそんなに不思議ってほどじゃねーけど……。
「では、次はデザートといきましょう」
「えっ」
まだ食うの!?
俺も食えなくはないけど、結構満足してるぞ!?
「この先の洋菓子店『メイプルリーフ』は、名前の通りメイプルシロップを砂糖の代わりに使っているので、甘さが上品な上にコクがあって、香りも楽しめて」
「わかりました! 行きましょう!」
食べ物の事になると、弥生先生目の色が変わる気がする……。
でも美味しそうに食べる姿を見てると、嬉しい上に動悸が少し穏やかになるから、とにかく弥生先生の行きたいところについて行こう!