第二話 あの日出た術の効果を俺はまだ知らない
家に伝わる拳法で喧嘩に明け暮れていたら、祖父の怪しげな術で女体化してしまった依谷強。
愛を理解すれば術は解けると言われ、修行と喧嘩が人生の八割を占めていた強は愛を求め動き出すのだった。
どうぞお楽しみください。
「本当に大丈夫なのかよ……」
学校に行く途中、思わず不安が口をついて出た。
じじいは、
『この術はこの世の理そのものに干渉する。つまり術者である儂とお主自身以外には、最初から女だったと認識されておる』
とか言ってたけどホントかよ……。
とにかくとっとと愛ってのを理解して、術を解かせねーとな。
学校の奴らに色々聞いてみるか。
「依谷ぃ! 何だその格好はぁ!」
げ。ゴリ沢。
何がこの世の理に干渉する、だ。
早速バレてんじゃねーか。
「女子生徒が男子の制服を着るなら事前に申し出がいるのだぞぉ! ちゃんと手続きを踏めぇ!」
「は?」
マジで言ってんのこいつ?
「LGBTQ+や個性の表現に対する配慮はするが、それは無秩序に好きな格好を許すものではなぁい! 申請書は後で渡すとして、理由を述べよ!」
「理由も何も、俺は前からこの制服っす」
「何だとぉ!? 嘘をつくなぁ! そういう特例の生徒はきちんと把握している! お前はそれに入っていないし、普段は……、んん!?」
「俺、ずっとこの格好っすよね?」
「う、うぅむ、確かにお前がセーラー服を着ているのを見た覚えがない……」
当たり前だろ。着てたらただの変態だ。
「す、すまない。俺の勘違いだったようだ……」
「いーっすよ」
それにしても、本当に周りの連中から女と思われてるんだな……。
しかもゴリ沢の感じからして、術の前後でも俺の行動や服装の記憶はあるみたいだ。
こりゃ早いとこ元に戻んねーとな。
着替えとかトイレとか気をつけねーと、後で変態呼ばわりはごめんだぜ!
読了ありがとうございます。、
世界の意識改変とか、思ったよりやべー術。
今後の展開に必要だからね。仕方ないね。
ちなみにゴリ沢先生の本名は郡沢植保です。
体育教師のゴリラに例えられる率は異常。
次話もよろしくお願いいたします。