第十五話 投げと撃ちのShowです
お待たせしました。一週間ぶりの更新です。
ブラを付けない強を心配したウサ子こと宇佐美朝子は、強を洋服屋に連れて行く。
そこで強が与えられた服とは……?
どうぞお楽しみください。
店を出た俺は、固定されて動きやすくなった胸を叩いてウサ子に礼を言う。
「サンキューウサ子! すっげぇいいなこの西洋サラシってやつ!」
「良かった。きっと開発してる人達も喜ぶと思うよ」
「そっか!」
これなら朝サラシを巻く手間もねーし、すっぽり収まるこの感じ!
それに、だ!
「スカートってのもウサ子の言う通り、身体の動きを意識するのにいいな!」
「……あぁ、うん、すごい似合ってるし良かったけど、……うーん、依谷さんには、スーツを着させたかったような気がするのは何でだろ……?」
うん!
掌底を撃つ時に腰が回っている感じがする!
こりゃあいい!
白虎の型は朱雀や青龍に比べて直線の動きが多いから、これで腰を意識すれば、より技のキレが増す!
女の格好って動きにくいだけかと思ってたけど、こんな利点があったなんてな。
「あ、そーだ。このスカートと下に履いてるスパッツってやつの金は払わねーとな。いくらだ?」
技のキレに必要と言えば、じじいも金を出すだろう。
「あぁ、いいのいいの。有効期限の近いポイントが貯まってたから、無駄にしたくなかっただけなの」
「そーなのか。サンキューな」
「どういたしまして」
しかしこういうのを手に入れると、実戦で使いたくなるな。
またゴリラ襲って来ねーかな。
「お、可愛い女の子はっけーん」
「うお、このコめっちゃおっぱいデケェじゃん!」
「スペリオルビルでお買い物とは、いいとこのお嬢さんかなー?」
「しかも女の子二人! ヒュー! たまんねぇ!」
「ひひひ、一緒に遊ぼうぜ? 庶民の遊びを教えてやるからよ」
何だこいつら。
ぶっ飛ばしていい奴らかな?
「……依谷さん」
「何だ?」
ウサ子に袖を引かれた。
何だ? 知り合いかな?
それならぶっ飛ばすわけにはいかないかー。
「……一旦お店に戻りましょ。そうしたら私のボディガードを呼ぶから」
「ボディガード?」
ウサ子、そんなのいるんだ。
やっぱ金持ちなんだな。
「この人達、話通じそうにないもの……。でも流石に店の中で暴れたり、プロのボディガードには喧嘩を売ったりはしないと思うから……」
何だ。
やっぱりぶっ飛ばしていい奴らなんじゃないか。
「じゃあ俺がぶっ飛ばしてやるよ」
「な、何を言ってるの!? 相手は五人もいるのよ!? 勝てるわけが……!」
「全然余裕。それにこの服の効果も確かめたいしな」
手でウサ子を下がらせると、男達が迫ってきた。
「こいつ……! ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって……!」
「男の怖さってやつを教えてやらなぁとなぁ……!」
「顔は殴るなよ? 顔腫れた女なんか、どこの店でも通報されるぞ?」
「わかってるよ。殴るなら腹だよなぁ?」
「ひひひ! のたうち回って許しを乞うのが楽しみだぜ!」
じりじりと間合いを詰めてくる男達。
まずは眼前の男の胸に、白虎槌腕掌を真っ直ぐに打ち込む。
うん、スカートの動きで、腰の動きが乗ったのがわかる。
これなら軽くなった体重でも、十分に威力が伝わっただろう。
「ぐはぁ……」
「な! お、お前、何で女の一撃で……!?」
「畜生! 女だと思って優しくしてりゃつけ上がりやがって!」
「ボコボコにしてやる!」
「覚悟しろ!」
俺を取り囲む男達。
この状況で打突だけで戦えば、その隙に他の男から攻撃を受けるだろう。
だがあいにくと白虎の型は単なる打突技じゃない。
「ぐえっ!?」
地を蹴って手近な一人の喉を掴み、
「がはっ!」
そのまま柔道の大外刈りの要領で地面に叩きつける。
これで囲みは崩れた。
白虎の型の真髄は、打突、掴み、投げを自在に使い分ける事にある。
「てめぇ! ぐえ!」
殴りかかってくる奴の顎を下から打ち抜き、
「このアマ! ぎゃは!」
次は腕を取って地面に叩きつけ、
「う、嘘だこんな事ー! うぐっ!」
最後の男の喉を掴んで壁に押し付ける。
うん、この服装のお陰で、白虎の型の使い勝手が増したな。
「うぐぐ……、苦し……、た、助けて……!」
「サンキューな」
「……は?」
「お前達のお陰で、俺の技はさらに最強に近付けた。だから、サンキュー!」
「あ、悪魔……。きゅう……」
あれ? そんなに強く締めてないのに落ちやがった。
まぁいいか。
「よ、依谷、さん……?」
「おー、ウサ子。終わったぞー」
目を見開いて震えてるウサ子。
そんなに怖かったか?
と思ったらめっちゃ走り寄って来た!
「素敵! 流れるような戦い方! 無駄のない動き! そして容赦のない一撃! 依谷さんが喧嘩をよくするのは知ってたけどここまでだったなんて!」
「え、あ、うん」
な、何だ?
時々ウサ子はこういうとこあるよな。
「あぁ、今日は何て良い日なんでしょう! 思い切って誘って良かった! 神様ありがとう!」
「あー、何だ。まぁ、ウサ子が楽しかったなら良かった」
その後帰り道が別れるところまで、ウサ子のテンションは高いままだった。
……変な奴。
読了ありがとうございます。
男達は犠牲になったのだ。
新たな装備の犠牲にな……。
次話もよろしくお願いいたします。