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    SH部入ります④

「記入不備もないし大丈夫そうだな......担任印は押して置いたから、あとは部長にこの紙を渡せば入部できるぞ」


 信濃川さんとスポーツシューティング部を訪れた次の日の放課後。

 私と信濃川さんは、入部するための手続きを職員室でしていた。手続きと言ってもB5サイズの用紙に名前とかを書くだけで大したことはなかった。


「それにしても若葉がスポーツシューティング部に入るなんてなぁ。先生はてっきり若葉はインドア系だから帰宅部か文化部に入るもんだと思ってたよ」


 たしかに思い返してみれば、初日に自己紹介の時に“家でゲームをするのが趣味で”とか“あんまり体を動かすことは得意じゃなくて”みたいな事を言っていたような気がする。


 まぁ実際に体を動かすのは苦手だし、運動部に向いてないけど......


「なんか見学に行った時に楽しそうだったので」


 それと、信濃川さんからの熱烈なオファーがあったので......


「そうなのか、まぁ怪我なく活動しろよ」


 そう担任の先生と話していると、信濃川さんも必要なことを記入し終えたらしく、担任印を貰うために入部届を先生に手渡した。


「......うん、信濃川も記入不備はないな」


 入部届を確認してから、先生は信濃川さんの入部届に印鑑を押す。


 私と信濃川さんは先生に軽く“ありがとうございます”とお礼を言ってから職員室を出て、スポーツシューティング部の部室に向かう。


        ◇


「入部決めてくれたんですか、嬉しいです」


 旧化学準備室には、昨日と同じ様にジャージ姿の種島さんが居た。

 私と信濃川さんが入部届を手渡すと、嬉しそうに何回も「本当にありがとうございます」と頭を下げながら言った。


 少し態度が大袈裟すぎるような気がしたので「そんなに嬉しそうにしなくても......」と思わず言うと、種島さんは「それはですね......」と前置きをして答える。


「昨日もチラッと言ったんですが、三人以上居ないと部活としては認められなくて活動自体制限されることが多いんですよ、なので澄玲さんと稔さんが入部してくれることでSHが出来るようになりますし、人数が多ければ公式試合にも出場することが出来るので、つい喜びすぎてしまいました」


「そうだったんだ」


 私と信濃川さんが種島さんの態度が大袈裟だった理由に納得していると、部室のドアが何度かノックされ「誰か居ませんか?」と声が聞こえた。



「あ、はいっ居ます」


 種島さんはドアに駆け寄って勢いよく開ける。


 ドアが開くと、ひとりの女子生徒が立っていた。


「あの、入部したいんですが良いですか?」


 立っている女の子はそう言うと、ブレザーのポケットからB5サイズの紙を取り出して種島さんに差し出す。恐らく入部届だろう。


「もちろん大歓迎です......って二年生! 先輩でしたか」


 渡された入部届を見て、種島さんは声を出して驚く。入部届には年組名前を記入する欄があるので、種島さんはそこを見たのだろう。


「取り敢えず、こちらへ」


 そう言って入部届を持ってきた先輩を部室に招き入れる。


 その先輩も、種島さんみたいにすらりと背が高く、背の低い私は見上げないと顔が見れない程だった。

 女子の中でも比較的背の高い信濃川さんよりも背が高いとなれば、この先輩の背の高さは160cm後半はあるだろう。


「えっと、私は二年四組の陽向彩乃って言います。元々帰宅部だったんですけど、女子のSH部が出来るって聞いたので入部しました」


 そう自己紹介すると陽向先輩は頭を下げる。


「その彩乃先輩は元々SHに興味があったんですか?」


「まぁ興味があったと言うか、私外部のSHクラブチームに所属してて」


「えっSH経験者なんですか?」


 種島さんによると、サッカーや野球、水泳などと同じ様にSHにもクラブチームなる物が札幌にも何個かあるらしい。


「そのクラブチームの名前をお伺いしても?」


「うん、SSHCのU20なんだけど、わかる?」


「もちろん知ってますよ。SSHCって結構強くて有名なチームじゃないですか」


「でも私は基本的にベンチで......」


「ベンチでも凄いですよ。SSCHのU20って、そもそも入会する時点でかなりの腕前を要求されるんですよね? 自分なんてベンチにも行けませんから......あっおふたりにも説明しますね」


 そう言って種島さんは私達にスポーツシューティングのクラブチームについて少し説明してくれた。


 SSHCは札幌に幾つか有るクラブチームのひとつで、規模も大きくレベルもかなり高く、本州の強豪相手にも引けを取らないらしい。

 そして、そんなSSCHの中でもU20と言われる選抜選手育成の為に設立された部門は、日本でもトップクラスの実力も持つチームで、過去に何人も日本代表を輩出しているそうだ。


「っじゃあ、めちゃくちゃ強いんだ」


「......まぁ確かにチームは強いけど私は全然で」


 照れ隠しなのか、陽向先輩は頭を下に向けて、小さい声でそう言った。


 

 陽向先輩が所属しているクラブチームの話などをしていると、部室のドアが何度かノックされて「入るで〜」と声が聞こえてくる。


 ドアが開かれると大阪弁の女の子......たしか平坂さんが入ってきた。


「由加はん、新入部員候補連れてきたで」

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