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第二話・SH部入ります

「あの若葉さん、御一緒にお昼頂きませんか?」


 四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り昼休みが始まると、前の席に座っていた信濃川さんがお洒落なデザインのランチバックを掲げて見せる。


 初日から誰かと一緒にお弁当を食べられると思ってなかったので嬉しい。


「良いよ......ってお弁当豪華だね」


「別に私が作ったものでは有りませんよ、作って頂いたものです」


 信濃川さんのお弁当には、色とりどりのおかずがぎっしりと詰まっていていた。

 漆塗りの日本風なお弁当箱に雰囲気を合わせて料理を作ったのか、中に入っている物はどれも和風の料理だった。

 信濃川さんのお母さんは相当料理に力を入れているらしい。


「そういう若葉さんの料理だって可愛らしくて美味しそうじゃないですか」


「お母さんがこういうの可愛いの好きでさ。やめてって言ってるんだけどね......」


 私のお母さんはいわゆるキャラ弁的なものが好きで、お弁当の蓋を開けるたびに、動物とかハートマークとか流行りのアニメキャラの顔とかを見る羽目になる。


 もう高校生なので恥ずかしいと言っているのだが、やめる気配は全くない。


「良いじゃないですか、わたくしはこの様な可愛らしいお弁当素敵だと思いますよ......今度わたくしも作って頂こうかしら。あの写真とっても良いですか?」


「うん良いよ、でもそんなに凄いものじゃないと思うけど......」


 信濃川さんはポケットからスマホを取り出して私のお弁当の写真を取る。信濃川さんにとっては可愛い弁当が珍しかったのか角度を変えて何枚も撮影していた。


「そういえば若葉さんは何処の中学校に在籍なさっていたんですか?」


 信濃川さんはだし巻き卵を箸でちょこんと摘みながら私に尋ねる。


「えっとね渓相中学校。東区の端っこにあるんだけど知ってる?」


「名前だけは聞いたことがあります。確か野球が強いと......」


 確かに私の母校である渓相中学校の野球部は全道大会の常連校だけど、その先へ進んだことは過去に一度もない。

 実情は“ちょっぴり強い”程度なのだ。


「まぁ誇れるほど強くはないよ......信濃川さんは?」


「えっと、わたくしは躑躅山女子学院の中等部から」


「えっ躑躅山って白石区にある?」


 信濃川さんは頷く。

 躑躅山女学院は言わずとしれた、私立の名門女子高校と中学校。制服がお洒落で可愛らしく、学校の設備も整っているらしいが入学には結構なお金が掛かる。


 詳しくは知らないけど皇室関係者も通っていたとか。


「でも躑躅山女学院ってエレベーターで高等部に行けるよね? なんでわざわざこんな高校に入学したの?」


「まぁ周囲と馬が合わなかったんですよ。お金を払っていただいた両親には申し訳ないですが、居心地が悪くて......ってこんな話どうでも良いですね御免なさい」


 最後の方はお茶を濁されてしまったが、私は家庭の話に首を突っ込むほど非常識な人間じゃない。無理矢理話題を変える。


「そうだ信濃川さんって趣味はあるの?」


「趣味ですか......ありふれてはいますが、映画鑑賞や読書などを嗜んでいます。最近はヘミングウェイの本を読みましたね。若葉さんはどのようなご趣味を?」

 

「えっと......その......」


 自分から話を振っておいて、返答を全然考えていなかった。

 正直言えば趣味と言えるような物を私は持っていない。家に帰ったら大抵FPSに時間を割いているタイプの人間だから映画も見なければ読書もしない。


 でもまあそう考えるとゲームが趣味なのかな?


「ゲームかな?」


「そうなんですか......わたくし、その手の遊びには全く触れてこなかったんですよ。具体的にはどのようなゲームを為さっているのですか?」


 具体的にと聞かれてもなぁ......ゲームに疎いならタイトルとか言ってもピンと来ないだろうし、内容とかを説明したほうが良いのかな?


「私がよく遊ぶのはエフピーエスっていうジャンルなんだけど、オンラインで対戦しながら銃を撃ち合ったりするゲームなんだよね」


「銃を撃ち合うんですかっ?」


 突然信濃川さんのテンションが上って会話に対する姿勢が前のめりになる。


「う、うん」


「そのようなゲームも世の中には存在してるんですか。今度おすすめの面白いゲームなどを教えて頂こうかしら」


「わかった。今度教えるね」


 その後は趣味の話から高校の印象や、中学校の思い出などについて話した。

 その流れで、中学校時代にの話で盛り上がった時、ふと思い出したかのように信濃川さんが私に質問した。


「そういえば若葉さんはどこの部活に入る予定なのですか?」

「えっとねぇまだ全然考えてなくて......もしかした帰宅部になるかも」


 とは言ったものの現時点では、ほぼ帰宅部に決定している。

 お母さんから口を酸っぱく「どこか部活にでも入りなさい」と言われてるけど、早く家に帰ってシーズンランクを上げる方が部活で汗を流すよりも楽しい。


「もし決まってないのでしたら今日の放課後新入生勧誘会へ行きませんか?」


 そういえば朝のホームルームで、色々な部活が体育館で新入生に向けた部活動紹介を行うとか言っていたような気がする。

 特に放課後はすることがないので断る理由もない。


「良いよ、予定もないし。それで信濃川さんはなんか気になる部活でもあるの?」


「はい、興味のある部活がありまして......これです」


 そう言って信濃川さんはブレザーの内ポケットから『スポーツシューティング部部員募集』と大きく書かれたプリントを私に見せた。

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