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第九話:重大発表

 もう部室の狭さにも慣れてきて......というか感覚が麻痺してきたのか、誰も部室の狭さに文句を言ったり指摘することはなくなった。


 普段はジャージを着て活動するけど、今日はミーティングだけで活動を終わらせるらしく制服のまま集まっている。


「まず皆さんに結構大きいお知らせがあります」


 種島さんはそう言うと私達にプリントを配る。


「えっと大抵のことは書いてあるんですが、口頭でささっと説明しますね。まず皆さんに見てもらいたのは一番上のお知らせなんですが、再来週他校と親善試合を行います!」


「お〜ぃ」

「うぇーい」


 なんて反応すれば良いのか皆よくわからなかったらしく、気の抜けた様なそれでいて勢いのあるような返事をする。


「相手は森丘高校で詳しい日時は、再来週の4月29日えっとゴールデンウィーク初日ですね。時間は朝10時から12時までの二時間です。なんか予定ある人とか居ますか?」


 特に誰も手を上げることはない。


「じゃあ全員参加できるという事ですね」


「あのさ相手の高校って強いの?」


 花咲さんが手を上げ尋ねる。


「まぁ昔はかなりの強豪校でしたね。もの凄く強い世代があったんですが、その世代が抜けてからかなり下火で偶に全道進出とか聞きますけど......微妙です」


「とは言っても私達よりは強いっしょ?」


 花咲さんの質問に重ねて浅天さんも聞く。


「そうですね、経験は向こうのほうが圧倒的にあると思いますし、人数も多いですから相手の方が強いと言えますね」

 

 スポーツシューティングは珍しく参加する人数が違っていても対戦できる少し不思議なルールだ。高体連の場合参加人数は最低10人、最高30人なので、最悪10人vs30人みたいな可愛そうな事が起きることもしばしばある。

 そして、それは親善試合も同じなので人数が少ない私達はかなり不利だ。


「恐らくやけど、相手は春の大会も控えてるしフルで挑んでくるんやない?」


「やっぱりそう思いますか平坂さん?」


「それめっちゃ卑怯じゃん! 私達そもそも初心者なのに三倍以上の人数で戦うわけ? 話しつけてもう少し平等に出来ないの?」


 少し感情的になった花咲さんを陽向先輩がなだめる。同学年の私達だと花咲さんを鎮めるのは難しいからこういう時めっちゃ陽向先輩が頼りになる。


「姫奈ちゃんの言いたいこともわかるけど、人数不利が生まれるのはスポーツシューティングの世界だとあたり前のことだから......」


「そうは言っても」


「でもね過去には10vs30の不利な戦いを勝利した例だってあるから、絶対に負けるとは言い切れないし、そもそも私達が森丘高校と戦えること自体凄いと思うよ。私達実績もないし人数も少ないから普通は相手してくれないと思う」


「そこは別宮先生に感謝ですね。結構色々と探し回ってくれたみたいです」


「でも花咲さんの言う通り折角戦うんだったら負けるのは嫌ですよ」


 と倉敷さん。


「別に種島さんも先生も負けるために試合を組んだわけではないんですから、人数不利とか経験不足とか色々と問題はあるかもしれませんが、出来る限りの努力をしてみましょう。弱音を吐くのはそれの後です」


「せやな、ウチらなら、何とか成るしれんし」


「なにか策でもあんの?」


「陽向先輩と由加はんとウチがいるんやし」


「陽向先輩はクラブチーム入ってるし強いのはわかるんだけどさ、ユカちゃんとツバサちゃんってスポーツシューティングの経験あるだけでしょ?」


「まぁそれなんですが......自分はともかく平坂さんは凄いんですよ。300m以上離れた人にもポンっとヘッショ決めちゃう凄腕スナイパーなんです」


「えっ本当?」


 この中で一番驚いてるのは陽向先輩。スポーツシューティング初心者の私達には、平坂さんがどのぐらい凄いのかイマイチよくわからない。


「まぁ本当やな」


「そんな人クラブチームでも何人かしか居ないよ......でもそれぐらい高精度な狙撃が出来るなら初動で何人か落とせる可能性も高いし......最悪私が近接戦に持ち込んで10人以上倒せばなんとかなるかな?」


 なんか陽向先輩さらっと凄いこと言ったような。


「まぁ取り敢えずそういう事です。色々と不安要素はありますが信濃川さんの言った通り出来ることをやって最高のパフォーマンスを発揮しましょう」


 

 と種島さんが意気込みを言うと、部室のドアが開いて別宮先生が入ってくる。


「親善試合の件は伝えたのか?」


「はい丁度今伝えました」


「そうか、それなら良いんだが......流石に部室狭すぎないか? 満員のエレベーターじゃあるまいし、もう少し広い部屋をあてがって貰えるよう話しとくな」


「そんなに狭いかな?」


「まぁ少し息苦しいですが、そこまで狭いとは感じませんけど......」


「いや、それは感覚が変になってるだけだ。なぁ浅天流石に狭すぎるよな?」


「そうですね。私も狭いなぁとは思ってたんですけど、みんな普通にしてるからこれが正常なんだと思って言わなかったんですが、流石に座ったら両肩が他の人と触れ合うのは狭すぎると思います」


 と浅天さんの強い希望と別宮先生の熱いオススメのもと、私達の部室は今までの化学準備室から化学教室にグレードアップするらしい。

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