気にくわない名前を論うだけのエッセイ~チーズインハンバーグ~
気分転換に書き連ねた駄文です。
読んでも何も得しませんが、それでも構わなければどうぞ。
こんにちは。突然ですが、世の中は理不尽で溢れていますよね。そしてその理不尽を叫びたいと思いながらも、「空気読めよ」という周りの同調圧力に流されてしまう。人間の悲しい性です。
そんな理不尽が、ここにもあります。その名も、「チーズインハンバーグ」
待って下さい。言いたいことは分かります。美味しいですよね、チーズインハンバーグ。僕も大好きですよ。そこに文句は言いますまい。だけど、大好きだからこそ言いたいんです。
本当に、そんな名前で良いのですか、と。
この名前、よく考えてみると、看過できない瑕疵があります。それも、中学生レベルの。
分かりますか。チーズインハンバーグとは、ハンバーグではなくチーズなのです。チーズインハンバーグという名前である以上、あれはファミレスのハンバーグ欄に存在してはいけません。
念のため、詳しく説明しておきます。
文法的には、in は 前置詞という分類です。これは、後ろに名詞を伴って句を作り、形容詞句若しくは副詞句として働きます。二つの分類については割愛しますが、<前置詞+名詞>で他の言葉を修飾できるということが分かって頂ければ結構です。
問題のチーズインハンバーグについても、<in+ハンバーグ>で形容詞句とみなすことができ、修飾の対象はもちろんチーズです。
即ち「チーズインハンバーグ」は、「チーズ←<in ハンバーグ>」という構造をしており、訳すとすれば、「ハンバーグの中のチーズ」です。あ、この記号は本稿でしか使わない、非正式なものです。
この構造から、チーズインハンバーグの主役はチーズだと分かるのです。
まあそもそもハンバーグは英語じゃねえとか、冠詞はどこ行った、とか、問題は他にもいくらでもあります。その中でどうしてことさらにこれを問題視するかと言えば、日本人、「修飾関係」に無関心過ぎないか、と思うからです。
「となりのトトロ」というタイトルの作品があったとして、主役がとなりなのかトトロなのか、分からない人はいないでしょう。それは、「となりの→トトロ」という構造を、無意識に掴めていることを意味します。それくらい、修飾関係というのは、言葉を解釈する上での根幹です。
しかるに、チーズインハンバーグという言葉に少しも疑問を抱かないというのは、その根幹部分が身についていないのではないか、と思うのです。
実際問題、チーズインハンバーグという名前が受け入れられやすい理由としては、日本語が前から後ろの修飾関係を基本としていることが挙げられます。
青い→花
速く→走る
一方で、英語では、前から修飾するものもあれば、後ろから修飾するものもあります。
a blue→flower
to run←fast
まさしくこれが、英語の修飾関係を難しくしているポイントだと思います。
ちなみに、「修飾」という言葉が初登場するのは、小学校の国語です。その後、当たり前のように英語でも出てきますが、その実修飾とはなんぞやということを説明できる中学生は、それほど多くはありません。そんな状態で関係詞だの現在分詞だの勉強しても、理解出来ないのは道理です。
前置詞や関係詞等の単語は、句や節といった言葉の「かたまり」の先頭にくる、マーカーとしての働きがあります。だから、そのかたまりを括弧でくくって、修飾先を考えてやるだけで、英語の文は凄く単純になるのにな、と良く思います。
英語を母語とする人ならそれが無意識にできますが、我々はそれを意識的にやらないといけません。
さて、話がそれました。難癖をつけるなら対案を示せ、と良く言われるので、チーズインハンバーグに代わる名前をいくつか提案してみます。
①チーズ・スタッフト・ハンバーグ
英語圏ではcheese stuffed hamburger steakというそうなので。
因みに、stuffという動詞は、布団に綿を詰め込む、等の「詰め込む」という意味があります。それが過去分詞で受け身の関係になっているので、直訳すると「チーズの詰め込まれたハンバーグ」という感じですね。
②チーズ入りハンバーグ
英語を諦めましょう。無理矢理英語を使っても、誰も得しません。分かりやすいのが一番。
③チーズハンバーグ
チーズが上に乗っている奴との区別が困難になりますが、そこは写真等で補いましょう。
どうでしょう、みなさんも、チーズインハンバーグの理不尽を、分かって頂けたでしょうか。