それぞれの帰郷4
『闘魂ロボ勇者』という称号が嬉しかった。からくり人形キューレマには初めての称号である。
産まれたくて産まれたロボットではない。産まれたときは掃除機ロボットであった。
毎日毎日、床を掃除していた。建物の間取りは完璧に覚えた。玄関からでて掃除もした。冒険だった。
そんなある日、玄関をでて道路までの道を掃除していた。ふと、振り返るとトラックにひきつぶされた。
スクラップ行になり、しばらくゴミ箱でじっとしていた。部品が外され、受付ロボットに取り付けられた。
毎日毎日、顔を識別し、電話をつなぐ簡単なお仕事。来た面会客の顔はすべて覚えた。顔を見ただけで内線をつなぐのは当たり前にやっていた。受付ロボットだけど、足には二輪があり移動ができる。
そんなある日、階段から落ちて粉砕してしまった。粉々になった部品を取り出されて、別のロボットになった。自動販売機ロボットもやった、介護ロボットもやった、医療ロボットもやった、まるで転職の様に身体が変わっていく。
そんなことを繰り返すうちに、最強のロボットになった。そして、これを最終形態に決めた。最強は孤独である。
広い宇宙に同じような境遇のロボットがきっといるはずだ。偶然聞いた噂話、偶然に見つけたシャルルーンの関係者、伊勢海老。近辺調査すると宇宙に行くという噂。すべて順調に言った。宇宙に行ける。
女王様 またはナターシャは生前馴染みの場所に来た。宇宙に行き、戻ってこれるかわからない旅である。ふと、感慨無量になり生家に来てしまった。
ナターシャは生まれも育ちも名家と言われる家系であった。すべてを壊したのは戦争である。そう、もう2000年以上も前のことである。建物は自然崩壊し、土台だけが残っている。
家族・友達はもういない。敵にみんな殺された。偶然、生き残ったのはナターシャだけ。悔しい、何度も何度も恨んだ、呪った。何日も何日も、絶望的な空腹感。それは、もうなく、麻痺している。いつ死んだのかわからない。ずっと生きている気がするし、最初から死んでいる気がする。
ふと見ると、目の前にぼんやり見える敵の死体。怨みと憎しみで敵の死体を破壊する。気がつくと敵の心臓を食べていた。いくつもの心臓を食べた。自我はもう失っていた。
ついに食い物がなくなり、自分の心臓を食べるためにつかんだ時、これで死ねるかもしれないと思った。
しかし、死ななかった。心臓がないにも関わらず、活きている。いや、心臓が複製されていたのである。ある怨念を込めて肉を食べると複製され細胞が活性していたのである。それは宇宙空間から飛来したバクテリアによるものだったのかもしれない。
そして、気がついた。この力を使って家族を領民を復活させる可能性があると。それからひたすら食った。腐肉を、虫だらけの肉を、干からびた肉を...
確かに死体は動いた。しかし自我が戻らない。
死なない脳の復活ができたのは、バクテリアを直接浴びたナターシャだけであった。他の死体はナターシャの思い通りに動かせる。ナターシャは死なない。自分に火を点けても、真っ黒な炭になっても復活する身体に成っていた。
そう、女王が誕生したのだ。孤独な女王。
宇宙のどこかで永眠できるかと思い、巷で噂になっているシャララーンの伊勢海老に接触したのであった。




