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魔術学院の異端教師  作者: My
6/8

国立アルバード魔術学院

目覚ましの音で目を覚ました。

時計を見ると針は6時を指していた、時間通りだ。

そのまま身体を起こし朝食の準備をする、準備といっても米を炊き、味噌汁と有り合わせで1品作るくらいだ。

今日は7時に理事長のところへ挨拶に行き、その後他の先生方への挨拶をしたら、担当する教室へ行き生徒たちに自己紹介といった流れだ。

本当なら理事長への挨拶は予めしておくべきなのだが学院側で問題があって時間が取れなかったらしいので当日挨拶という形になった。

何でも自分が担当するクラスの担当教授だった人が准教授になるのを拒んだらしく辞めてしまったらしい。我ながら罪悪感を感じる羽目になるとは。

そんなことを考えてたらいつの間にか朝食の準備が終わっていた。

朝食を食べ終わると直ぐに食器を洗い、スーツを着て家を出る。

家から学院までは5分とかからない、その為すぐに学院に着いた。

正門から入ろうとすると警備員と思しき男に声をかけられる。


「すみませんが、この先は学院の関係者以外立ち入りが禁止となっております」

「自分は今日からここで先生をやらせてもらう者です」


そう言って俺は鞄から推薦状を出した。

それを確認した警備員の男は、腰に装着していた無線でどこかに連絡を取り、


「失礼しました、どうぞお通りください」


男はすぐに道を開けて一礼をした。

俺は少し急ぎめに理事長室を目指した、と思ったのも束の間、


「理事長室ってどこだ?」


そんなことを考えてると、向かいから歩いて来た女子生徒がいた。

あの子に聞くか。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、理事長室ってどこにあるか教えて貰えないかな?」

「えっと、階段上がって2階の突き当たりにありますよ」


少し驚いたような顔をしてたけど、すぐに答えてくれた。


「ありがとう」


お礼だけ言って直ぐに立ち去る、イラついているように見えたのは気の所為だろうか?

気にしないようにして、直ぐに2階の突き当たりを目指す。


「此処か、時間も丁度だし入るか」


トントンとノックをすると、すぐに返事が返ってきた。


「どうぞ」

「失礼します」


そこにはとても美しい金髪の女性が椅子に座り、何やら書類を整理している。


「おや、もう7時か時間が経つのは早いね」

「貴方が白銀空也君で合ってますよね、私がこの学院の理事長をしています、マナリア・リューズです、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


俺が挨拶をすると何故か突然笑いだした。


「そんなに畏まらなくていいですよ、実際はそっちの方が立場は上なんですから」

「いえ、そういう訳にはいきません。貴方は理事長であって自分は一教員ですから」


はぁー、とため息をつく。

そして咳払いを1度し、理事長は真剣な面持ちで喋りかける。


「貴方は何か勘違いをしているみたいですけど、貴方も私も半分は神様と天使なんですよ。そこに人としての立場の介入する余地はないんです、私がどんな立場で相手が誰で在ろうと貴方が殺れと命じれば、私はその命に従わなければならないんですよ」

「···理解に苦しむな」


言葉を口にした瞬間、思わずハッとしてしまった。

本音で愚痴を呟いてしまったことに。

大きくため息をすると、理事長はクスッと笑い、


「まぁ、私も最初はそうでしたけど恩恵は大きいですよ。例えば今世と来世の約束とか」

「へぇー、それは凄いな」


とは言ったものの、こっちは常人の数十倍も生きてるから来世なんてあるかもわからないけどな。


「私が言いたいのはこの事を知っておいて欲しいということです。ですが確かに私も貴方も体裁がありますから緊急時や何か用がある時などはマナリアと呼んでください、それ以外の時や皆さんの前では理事長でお願いします」

「分かりました、ですが何があるかわからないので学院内では理事長と呼ぶことにします」


学院内は子供が多いとはいえ、優秀な者の集まりだ。

何時どこで監視されてるかも分からないからな。


「はい、それでいいと思います。けどこの部屋や2人きりの時はマナリアでもいいんですよ」


近い近い!眼前まで近寄るなよ。そしてウィンクをするんじゃない。

てか何、俺の心読めるの?


「それにずっと私興味があったんですよ、帝国七不思議の一つのソレイユ・フィーさんの正体に」

「それは雷神から聞いたのか?」


周りを凍り付かせるような冷たい言葉を殺気混じりに放つ。

理事長はビクッとしてその場から一歩下がり俺の質問に答えた。


「そうです雷神様から聞きました。だからそんなに殺気づかないでくださいよ」


顔は笑っていたがよく見ると冷や汗をかいており、足が小刻みに震えている。


「す、すみません。情報が漏洩してるのかと思って、軽率な行動でした」

『そうだぜ、女は怖がらせるもんじゃない』

「そうだな、ってお前今までどこにいたんだ」


病室を最後に出てこなくなっていた、いや実際には忘れていた雷神が突然目の前に現れた。


「お久しぶりです、雷神様」

『おぉ、久しぶりだな。2週間ぶりくらいか』

「おい!雷神お前今までどこいってたんだよ」

『どこって、お前の頭上にずっと居たけど』


いやいや、姿どころか気配すら無かったんだが、少し安静にしてただけでここまで鈍るものか?


『お前が気づかねぇのも仕方ねーよ。姿を消してたんじゃなくて、そもそもここに居ないんだからな。俺から気配感じるか?』

「何も感じない、姿は認識できるのに、触れないのは霊体か何かかと思ってたんだが」

『今の俺はいわゆるエコモードってやつだ。俺が認識させたい相手の瞳に映ってるだけ、やろうと思えば実体化もできるがな』

『一応俺はお前のナビとしてここに居るからお前が何か聞いてこない限り出て来れないからな』


そういうのは先に言えよ。


「空也さんに雷神様そろそろ時間なので移動しませんか」


俺は時計を確認すると長身が真下を指していた。授業の開始時間まではあと1時間ほどあるが他の先生方に挨拶をしなくちゃいけないからな。


「分かりました、えっと場所は?」

「私についてきてください。案内します」


理事長がそう言うと雷神はいつの間にか消えていた。

そのまま理事長室を出て教務室を目指す。


「一応おっておきますけど、空也さんの事はバレていませんが感の鋭い人はいるので気をつけた方がいいですよ。特に1-C担任のラス先生には」

「肝に銘じておきます」

「それと教務室以外に必要があれば研究室を用意しているので、必要だったら仰ってください」


返事をして応答する。

さすがに緊張してきたのかもしれない。バレることは無いと思うが、それ以前に良い人間関係を築くことが出来るだろうか。

理事長室から教務室まではそこまで距離は無く、考え事をしてたら直ぐに着いてしまった。


「皆さん、新任の先生を連れてきましたよ」

「失礼します、今日から1-Aの担任をさせていただきます、白銀空也と申します。ここに来る前は軍で小隊長をしていました、階級は少尉でした。よろしくお願いします」


目の前の数人の先生に挨拶をすると、何故か大半が納得しない顔をしている。

その中の一人が口を開く。


「少尉か、推薦でここの教員になるくらいだから最低でも大佐クラスが来ると思ってたんだが、それにすごい若いしな」


そりゃそうか、こっちは3000年以上生きてるが外見だけ見れば20代そこらだ。それは疑問に思われても仕方ないか。


「まぁでもそれだけ実力派ってことだろ。これからよろしくな、俺は1-B担任の剛力健だ。困ったことがあったら何でも聞いてくれ」


もちろん知っている。この男剛力健は帝国でも三本指に入る位力が強い、その見た目は筋骨隆々で純粋な力較べでは俺ですら勝てるか分からない。前にAys1の力自慢のグラッド=パラダクスと腕相撲をして買った実績もある。グラッド自体も力だけなら誰にも負けないくらい強く、其れこそさっきの述べた帝国でも3本に入るくらいだ。


「それと前任の先生のことは聞いてると思うけどあまり気にするなよ。原因がどうであれ辞めたのはあいつの意思だ、お前が気にする事はないからな」


噂に聞いた通り優しい人だ、人格者と言われるだけある。


「わ、私は1-C担任のラ、ラス=ボーガッドと言います。よよよ、よろしくお願いします」

「彼女は能力が原因で少し人と会話するのが苦手なんだ、ただ教師としては優秀だから安心してね」


理事長のフォローのおかげで、挨拶を失敗して顔を真っ赤にしてたラス先生は落ち着きを取り戻した。

その後、他の先生方とも挨拶を交していると、HRの時間ギリギリになってしまう。


「これからよろしくお願いします」


最後に全体に向けて挨拶をして、教務室を後にした。


「ここが今日からあなたが担当する1-Aの教室です。事前にお送りした資料に記した事を生徒に説明する必要があるので、私も一緒に入りますね」


分かりましたと返事をし、教室のドアを開ける。

この時は思いもしなかった、俺の人生がここからめちゃくちゃになる事に。

そしてどれだけ後悔をしたことか、神と関わったことを。

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