変わり目
「入りますよ~」
「どうぞ」
ドアを開け院長と陛下が部屋に入ってこようとした。
「悪いが如月院長今日はこの場で戻ってはくれないか、手早く話を済ませたいんだ」
院長は「は~い」と言ったあと直ぐに部屋の前から消えた。
「今椅子出しますね」
「すまない助かる、って動けるのか?」
「はい、もうすっかり」
俺は腕をグルンと回してみせた。
「で、早速で悪いんだが本題に入らせてもらうぞ」
「分かりました」
「あの力の事を言ってくれる気になったか?」
「すみません、それは言えません」
「・・・そうか」
陛下は何か言いたそうな目でこちらを見てきた。
「代わりに帝国民は俺が黙らせますから」
「どうやるのか聞かせてもらえるか」
「まず、力に関しては神代兵器による新魔術の失敗による暴走ってことにします、生憎俺が魔術がそんなに使えないことを知ってるのは数人しかいないので大丈夫なはずです」
「だが、いくらお前でも新魔術の失敗って事で納得するものは少ないと思うぞ」
それはそうだ、ソレイユ=フィーの方の俺は知名度も権力もそれなりにあるが、それでも数十万人が死んだとなればそう簡単に済む訳が無いが、
「だからこそのアーティファクトですよ、アーティファクトなら実際に神の力も借りられるものもありますからカモフラージュに最適なんですよ」
「それに、どちらかと言うと反発するのは貴族達ですよね」
「ああ、そうだが」
やっぱりか、Aysが何かやった時貴族はやたらと説明を求めてくるからな、そこら返帝国の一般民はあまり問いつめてこないから楽なんだよな。
「貴族たちなら大丈夫ですよ、テスタにこれ以上追求させないようにと、手紙を送っておくんで」
「テスタくんなら安心だな」
テスタは普段Aysの活動とは別に帝国軍の統括及び指揮を担当してるから、何かと色々なところにも顔は利くし、信頼も厚いから、帝国で敵に回しては行けない人として貴族達に知れ渡ってるからな。
陛下が信頼をおけるのも納得が行く。
「それとソレイユ=フィーで行動するのを少し避けたいので別の任務を与えてくれませんか、例えば娘さんの護衛とか」
「なっ、なんでその事を!」
明らかに動揺してるよ、そんなに心配だったのか。
「何で知ったかはさておき、理事長には話を通してあるらしいので後は陛下の許可だけです」
「しかし、いきなりそんなことを言われても」
「俺ほど信頼できる人はそんなにいないと思いますよ、それに俺なら何かあっても大丈夫だと思いますし」
「確かに空也のことは信頼してるが、手続き等に時間はかかるぞ」
雷神が俺の事を高く評価してたから結構押して言ったら意外と好反応だな。
するとコンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「すいません~、空也さんあてに手紙がと解いていますけど入っても大丈夫てすか~?」
院長の声が聞こえると、突然今まで部屋の隅で静かにしてた雷神が笑いだした。
「すまんが今大事な話をしてるから後にしてもらえるかな」
陛下が断ろうとすると、
『出てみろよ』
「陛下すみません、入ってもらってもいいですか」
「失礼します~、マナリア・リューズさんからの手紙です~」
俺は受け取った手紙を見てみると、
白銀空也、貴方を国立アルバード魔術学院の教師へ推薦します。
はっ?と驚いていると雷神が俺を見て大爆笑してた
『お前のそんな顔が見れるなんてサプライズ大成功だな、良いもん見れたぜ』
俺はすぐに平然を装い手紙を陛下に渡した。
「陛下、これにサインをお願いします」
陛下は何度も目を丸くしながら手紙を確認した。
「どこまで用意周到なんだ、流石に驚きを通りこして引くぞ」
「まぁそれは良いじゃないですか、これにサインしてくれれば来週の月曜から俺も晴れて教員です」
「来週の月曜からは早すぎじゃないか、儂が言うのもあれだがもう少し遅くてもいいんじゃないか?」
「事情があってなるべく早く教職に着きたいんですよ」
「わかった、戻って直ぐにサインするよ」
ため息をつきながら渋々了承した。
「ありがとうございます、俺は退院の準備が有るので、それと帝国の少し離れた場所に獣が出現する可能性があるんですけど、もし出現しても一切攻撃させないでください。ただ優秀な監視をつけておいてください」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
「危険だけど無害な獣が出るだけです」
「なら、テスタくんを行かせるしかないか」
陛下が帰る前に俺は一応の警告をして陛下を見送った。
その後、陛下が戻ってすぐに雷雷丸が現れテスタが病院に来ることは無かった。
俺は無事こっそり退院し、教師になるための準備をしていたらあっと言う間に日曜が終わりそうな時間になっていた。
「俺も明日から先生か、まぁ何とかなるだろ」
最終確認をした後直ぐに布団に入った。