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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
90/150

第90回 祭りの後でございます


 灯篭祭もお開きになりました。

 日付も変わり、街はしんと静まり返っております。


 お嬢様はすっかり踊り疲れられ、わたくしの背中でお休みになりましたので、先程お屋敷にお送りいたしました。


 で、わたくし再びその広場まで戻りました。

 現場検証をなさっておいでるケイヴ様が、お変わりない難しそうなお顔を下に向け、地面とにらめっこを嗜んでいらっしゃいます。


「いかがでございましょう、ケイヴ様。ガラスの靴は見つかりましたか」


 わたくし、ブリキのカップに入れたパンプキンスープを、くたびれたコートの背中に差し出しました。

 カボチャの馬車の魔法も解けましたので、使用後はスタッフがおいしくいただきます。


「執事殿。いや、今回もトカゲの尻尾切りですわい」


「ケイヴ様の魔力検知きゅうかくにも引っかからないとは、中々のものでございますね。ですが、これで逆に目星は付きましたかと」


 ケイヴ様はくたびれた帽子をぐっと目深に押し込められ、熱いスープをハードボイルドにずずっとすすられました。


「んむむ。……儂が長年追っております、とある魔法犯罪シンジケート。違法薬物や人身売買など、叩いて埃の出ん所はない、それはデカい組織ですぞぉ」


 ケイヴ様はそうおっしゃってカップを出されましたので、パンプキンスープに唐辛子粉を多少混ぜたものをお代わりにお出ししました。


「そのグループは特殊な魔法の持ち主を狙っておりますね。前回は魔法学校の生徒としてかも知れませんが、今回は明らかにお嬢様個人に御用がおありでした。手口こそ同じでしたが気配の消し方も上手でございましたので、これからは一層の多面的なご警戒が必要と進言いたします。無論、わたくしもお嬢様の護衛を強化いたします」


 わたくし真面目な顔で、スープと唐辛子粉の分量を逆にしたものをお注ぎいたしました。

夜は冷えますので、お身体を温めるための、わたくしの思いやりでございます。

いやがらせではございません。


旦那様ではございませんから。

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