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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
89/150

第89回 灯篭祭でございます (下)


 めらめら、めらめら。

 格子状に積み重ねられた木材の中で、わらで作られた大きな人形が燃えております。


 屋外仮面舞踏会に使われるキャンプファイア、巨大なかがり火でございます。

 この火が悪しきものを焼き払い、また近しい魂たちが再びあの世へとお帰りになるための道標、いわゆる送り火となります。


 その激しく逆巻く大きな炎を取り囲んで、仮面をかぶった人々が、太鼓や笛、弦楽器の音色に合わせて陽気に、かつ悲しげに踊ります。

 灯篭祭のクライマックスシーンでございます。


 お嬢様も音楽の調子を追いかけられながら、細く可憐な白いお腕やおみ足を、ぶるんぶるんと、ちょっぴりだけ不器用に伸び縮みさせてダンスを頑張っておられます。


 仮面をかぶられても、その仕草だけでお嬢様でいらっしゃることがよく分かります。


 正確には、まとめられたおぐしのお色とつや、包帯をぐるぐるに引っかけて仮装なされたドレス、の下の肩幅や骨格、お首のすじにちらりと浮かぶ汗のかき方、ステップを踏まれるお靴の音、とその他もろもろなどからどんなお姿でいらっしゃってもお嬢様のことは見間違えようもございません。


 そのような観察眼を持っているかは存じませんが、お嬢様の背後に、踊る振りをしながらそーっと近づく不審な影がございました。

 不審と申しましてもわたくしではございません。

 お祭りには似つかわしくない、取って付けたようなボロ布をまとった、クォリティーの低い仮装の集団でございます。


 その手がお嬢様のお背中に向かって伸びようとした瞬間、


「わたくし、執事仮面でございます」


 うなりを上げて燃え盛るキャンプファイアの中から、わたくし、シュタッと参上でございます。


 わら人形の仮装の下からいつものタキシードを翻しまして、通常技の執事チョップが月光を跳ねました。


 炎に包まれておりましても、わたくしの肉体は毛の1本すら焦げておりません。

 お嬢様をお守りすべく、心が熱く燃えておりますので。

 これぞ執事魔法――


執事しつじ闘魂ファイア≫!!


 後は近くで仮面をかぶって待機しておいでのケイヴ様にお任せいたしまして、お嬢様の御前に控えておりますと、




「サン! トリック・アンド・トリート!!」




 お嬢様が鬼の仮面を持ち上げられるや、わたくしにがばっと飛びついて来られました。


 わたくしがぽかんといたしておりますと、その口に小さなお指で虹色の砂糖菓子の欠片を差し込んで来られました。

今回はちゃんとした仮面でございます。


本当でございます。

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