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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
88/150

第88回 灯篭祭でございます (中)


「お嬢様。そろそろお外もとっぷりいたして参りました。仮面をお召しになり、近隣のお宅を巡回なさるお時間でございます」


 お嬢様はお庭をひゅんひゅん飛び回るツノアリトカゲワニヘビこと、川の主様の背中にお乗りになって、空中遊泳をお楽しみでいらっしゃいました。


「あ! 分かったわ。今行くから! 主様、遊んでくれて、ありがとう!」


 お嬢様は川の主様と阿吽の呼吸で一度宙返りされてから、地上に降りられました。


 魔法やお勉強、スポーツに剣術などがちょっとだけお得意ではいらっしゃらないかも知れませんが、お嬢様の生き物に対する慈しみと敬いのお心は、紛れもなく素晴らしいものでございます。


「それでは行ってらっしゃいませ、お嬢様。わたくしはここでお留守番をいたしまして、訪れる方々のおもてなしをさせて頂きますので。

 このお屋敷のように、カボチャなどで作ったランタンのあるお宅で『トリック・オア・トリート』とおっしゃって下さい。『お供えをくれないと化けて出るぞ』というような感じの意味でございます」


 お嬢様は街でお選びになられていました仮面をかぶられ、意気揚々とご出発なさいました。


 仮面はスマートな鬼の柄でございます。

 わたくしの故郷のほうでは、水の都のカーニバル風ペイントを施された夜叉、という風情が最も近いかと存じます。




 お屋敷を訪ねられるお客様の応対としまして次々にお菓子をお配りいたしまして、虹色に透き通るしなびたおせんべい状の謎の砂糖菓子はあっと言う間に売り切れになってしまいました。

 のでここは早めに店仕舞いをいたしまして、次のイベントであります仮面舞踏会の会場のご準備に向かいます。


 舞踏会とは申しましても迎賓館のような立派な建物ではなく、屋外の広場にキャンプファイアを焚きまして、その周りで仮面をかぶった方々がゆったりとしたリズムで踊るものでございます。

 わたくしの故郷では、盆踊りと呼ぶ行事がそれに似ております。



 仮面をして火を囲んで踊りますと、彼岸と此岸の境目があやふやになり、死者の魂もお気軽にご参加いただけます。


 隣で踊る仮面の人も、実はあの世から来たご先祖かも知れませんし、懐かしいあの人かも知れません。




 はたまた。




 いつかのような誘拐犯のグループが。





 お祭りに紛れて侵入しているかも知れません。

あらかじめ申し上げておきますが、

次回・下にて事件は速攻解決いたしますのでご安心下さい。


読者の皆様には気負われることなく、お茶やジュースをお飲みになりつつ音楽を聴きながらエクササイズに汗を流し宿題やレポートを大切にする姿勢でお部屋のお掃除の合間にお夕食の献立を考えるかたわらリラックスなさって

お気軽にお楽しみいただけましたら幸いです。

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