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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
87/150

第87回 灯篭祭でございます (上)


 カボチャの馬車が道をゆきますと、周囲から驚きと感嘆の声が上がって参ります。

 お嬢様はその度に窓から身を乗り出され、お手をお振りになって応えられます。


「街の皆に喜んでもらえて嬉しいわ。あ、ねえ、サン。あれは何かしら? 怖い顔が、いっぱい吊るしてあるわ」


 お嬢様が指さされた方向は、わたくしからは見えません。

 わたくし、ただいま馬車の下で横になって回転し、車輪一体系の動力をまかなっております。


 ただ、お嬢様の車上でのご様子に関しましては、当然でございますが手に取るように把握いたしております。


「お嬢様、あれは木に仮面をたくさん引っかけて飾っております。

 夜になりますと、住民の皆様はあの仮面をめいめい装着して変装し、街を練り歩きます。その姿で各家を回りまして、お菓子や果物の施しを受けます。

 施す側は、訪れる仮面をご先祖様や親しい方の霊が訪ねて下さったとして、お供えとお礼を兼ねて渡します。

 もちろん楽しいお祭りでございますので、子供たちも仮装して家を訪ねます。お嬢様も、お好きな仮面をかぶられてはいかがでしょう」


 お嬢様は、わたくしのご説明をお聞きになって、ちょっとだけ神妙なお顔をなさいました。

 灯篭祭は、亡き人々との束の間の再会の場でもございます。


 そのことを思いやり気遣われる、お優しいレディーのお姿。

 この執事、しかと拝見いたしました。

 お嬢様の寄りかかられるお背中と踏まれるお足の裏からの骨伝導で。




 通りを多少赤く染めながらも、お屋敷にご到着でございます。


 バオバブ様にも、わたくしが施しました飾りつけの数々が、燦然と輝いております。

 カボチャやカブ、赤ピーマンなどを顔の形にくり抜いたランタンが取り付けられ、お屋敷の周囲を、先日生肉で雇用いたしましたツノアリトカゲワニヘビが飛び回ります。


 さらには辺り一帯を、掘り出して浄化いたしました魔力の瘴気が虹色の風船状になってふわふわ漂っておりますが、


「わあー! どうなってるの、これー? じいーーーーーっ」


 お嬢様が無垢な瞳で純真に覗き込まれますと、びくりっと硬直し干しプルーンのようになってぼたぼたと落下いたしました。

ちょっと浄化した魔力の瘴気さん、そこ代わって下さい。

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