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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
85/150

第85回 カボチャの馬車でございます


 もうすぐ、この国では秋の灯篭祭が開催されます。


 収穫されたお野菜や果物の中身をくり抜いて容器を作り、それを灯篭や提灯にして飾る、伝統のお祭りでございます。

 伝承ではその灯りに誘われて死者たちの魂が集い、生者と語らい共にひと時を過ごすという、ちょっと物悲しくも賑やかな、そういう行事となっております。


 わたくしの故郷では、時期的にも内容的にも近いものではハロウィンとも呼ばれておりました。

 こちらの国でも、皆様お化けの仮装などをしてお外を練り歩いたりされます。

 そうすることで、死者の霊の緊張をほぐしてお祭りに参加しやすくしよう、という配慮とのことでございます。


 このところ、領内はその話題で持ちきりでございますし、お嬢様もお楽しみになさっておられます。


 わたくしも、ここまで急ピッチでご用意を進めて参りました。

 先日までのお庭の改造、並びに川の主様もしかり、掘り当てて浄化しました魔力の瘴気もしかりでございます。

 もちろん、我らがバオバブ様にもお祭りの主役となって頂きたく存じます。


 それから、お嬢様をお迎えするための乗り物といたしまして、カボチャで馬車を作ります。

 お屋敷の前にございます買い置きのカボチャをお庭に持って来まして、浄気の出るところにごろりと配置いたします。


 カボチャは浄気を吸ってむくむく大きくなりました。

 が、あまり幅が広くなりすぎますと道路を塞いでしまいます。

 わたくし、途中でカボチャの隅っこを持ちまして、むにーっと引っぱりました。

 前後に長ーい、リムジンカボチャでございます。


 それをくり抜いて客室を作って参ります。

 壁を外してドアにし、種の外殻を組み合わせて蝶番をこしらえ再度取り付けます。

 窓も開けますが、夜風は冷とうございますので、ガラス代わりに表皮のごく薄く削ったものを張り、お外の様子もご覧頂けるようにいたします。

 内装も優雅に、かつ自然の素材を活かしたものにいたしました。

 ソファのベースは硬い果肉、クッションとして種を包むワタを乾かしてほぐしたものを、もちろんリクライニング機能付きでございます。


 馬の代わりにジャガイモを大量にご用意いたしました。

 寒い地域の犬ぞりのような風情で、心温まります。


 車軸と車輪は例によってわたくしの定位置でございます。

炭水化物とビタミンがたっぷりでございます。

これからの時期、風邪の予防にはぴったりでございますね。


皆様もカボチャ、くり抜いてみてはいかがでしょう。

もちろん、刃物のお取り扱いにはお気をつけて。

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