第82回 暁の眼鏡でございます
川を作りました翌朝でございます。
様子を確認いたしますべく、わたくし、そーっと川のほとりに立っております。
あまり気配を発しますと、お魚が驚いてしまいますので。
岩の出っ張ったところに、良さそうな釣りポイントがございました。
実際、わたくしがそれを期待いたしまして配置いたしました岩でございます。
狙い通り、流れの緩やかな影の部分に、お魚がたくさん泳いでおります。
と、水底がにわかにざわつきまして、お魚たちは皆逃げていってしまいました。
下に何かがいます。
水面は、今の騒ぎで濁ってしまいまして、よく見ることが出来ません。
わたくし、調査を開始いたします。
両手の指で2つこしらえまして、顔に当てます。
そのまま顔ごと、水面にぴちゃんとつけます。
状態分析の魔法の応用技――
≪執事暗視≫!!
おりましたのは、長い蛇のような身体とワニのような手足、トカゲやサンショウウオのような顔に太い角と立派なたてがみを備えております。
かつて龍と呼ばれていた生き物でございます。
わたくしが昨日地面を割りました際に、地脈を深くまで刺激いたしまして、地下に眠る魔力の瘴気の残滓を掘り当てておりました。
この生き物は、それの影響を受けたものと推察されます。
もちろん狂暴な怪物でございます。
お嬢様の住まわれるアスレチックお屋敷に、このような危なっかしい生き物は本来招かれざる存在でございます。
早速駆除のため戦闘シーンに入るところではございますが、
実はこの、ツノアリトカゲワニヘビはわたくしがわざと呼び寄せたものでございます。
ちょいと餌付けいたしまして、お嬢様が釣りを嗜まれる際の川の主として君臨していただけますよう、生肉と猫じゃらしを持って交渉シーンに入ります。
二つ返事でOKをいただきました。
わたくしの故郷に、国際的に有名な手ごわい戦略シミュレーションゲームがございます。
何故それをここで話題に出しましたかと申しますと、
つまり、そちらにも龍が登場したりするためでございます。
他意はございません。ちっとも。




