第80回 銀杏拾いでございます
王立魔法学校の敷地内にございます、ちょっと狭い並木道をお嬢様とご一緒に歩いております。
ここは、以前お嬢様がご誘拐され遊ばされたところでございます。
お嬢様のご不安を払拭申し上げるべく、わたくしがおそばに付いております。
従いまして、お嬢様には何一つご心配いただくことはございません。
が、お嬢様のお心は、ちょっとばかり別のところにあらせられます。
「くさ~い」
ここは、イチョウの並木道でございます。
わたくしの故郷よりこの国に種を持ち込みまして、数年前から街路樹として普及させていただいております。
「この木、葉っぱが綺麗な黄色でとても好きなのだけれど、なにか変なにおいがするわ」
「お嬢様。このにおいはイチョウの果実より発せられております。この実は銀杏と申しまして、秋の味覚の一つでございます」
「うそ! このくさ~い実を食べるの?」
「果実の内側にございます、種を割りまして中身を食用といたします。とてもおいしゅうございますが、栄養価が高すぎまして、お嬢様はあまりたくさん召し上がりますと鼻血が出てしまいます」
「鼻血……? やだ、怖い」
わたくし、鼻血を否定されまして何気にショックでございます。
「でも、サンが広めてくれた木なら、悪いものじゃないわよね。ちょっとだけ、興味あるかも」
早速いくつか採取いたしまして、実を外して種を出してみました。
このままですと、まだにおいがかなりございます。
乾燥ついでににおい消しもいたしましょう。
ふーふーの反対で、すーすーいたします。
自然風の魔法の応用技――
≪執事秋風≫!!
後は両手を擦り合わせまして熱を発生させ、銀杏を炒るだけでございます。
こちらの国の人々の体質から考えますと、
お子様は3粒まで、大人は10粒くらいが無理のない数となります。
わたくしはバケツいっぱい軽くいけます。
当然、鼻血スプラッシュでございます。




