第75回 たまのお休みでございます
翌朝、太陽が姿を現した瞬間に、お嬢様が飛び上がるようにご起床なさいました。
「おはよう、サン! 早くお庭に行きましょう!」
わたくし、お嬢様のご希望により、お茶を魔法を使わずにゆっくりと淹れておりました。
そのため、まだお湯が沸いておりません。
「お茶ならわたしが淹れるから、大丈夫。サンもたまには魔法とお仕事をお休みしないと」
何とお優しいお言葉。
わたくし、顔面から珍しく赤くない液体が流れました。
「前から決めてたの。今度わたしが帰った時は、サンに楽させてあげようって!」
ははあ、それで果物をご自身で取りに行かれようと。
わたくし、お嬢様のご意志を尊重いたしまして、脚立とハサミ、手袋と籠を抱えてお嬢様の3歩後ろを静々と尾行……随行いたしております。
お嬢様は作業着とはちまきだけで、他は手ぶらでいらっしゃいます。
「では、お嬢様。まずはこの、イチジクなどはいかがでございましょう。わたくしが下で脚立を支えておりますので、お嬢様はこのハサミをお使い下さい」
「ありがとう。頑張るわ」
お嬢様は、小さいお身体を精一杯伸ばされ、うんうんと額に汗を浮かべられながらイチジクを切り落としていかれました。
わたくしは、空いたほうの手で籠をお持ちいたしまして、柔らかくて潰れやすいイチジクの果実を絶妙な籠の操作でふわっと受け止めております。
「たくさん取れたわね。次は、隣のクリをやってみたい!」
お嬢様は大喜びで、柔らかくて潰れやすいイチジクの上にクリをイガごと切り落としていかれます。
わたくし、空中でイガから実だけを抜き取りまして、イチジクの隙間にクリの実を滑らせていきました。
お嬢様のお気持ち、決して無駄にはいたしませんし、これは生活でありお仕事ではございません。
ノーカンでございます。
小さな子供の初めてのおつかい、後ろからそっと見守り
こっそりと手を貸したりしたくなるお気持ちはよく分かります。
わたくしがそれをいたしますと、何故か職務質問でございますが。




