第72回 お庭造りでございます
この頃、お嬢様はほぼ毎週お休みの日には、このバオバブ様で出来たロマンティックお屋敷にお帰りになります。
大木をくり抜いた家という、童話のような風情を余程お気に召して頂けたようで、わたくしといたしましても大変嬉しく存じます。
お嬢様が更に快適にお過ごしいただけるよう、お屋敷内部とその周辺の機能を改善して参りたい所存ではございますが。
お嬢様ご自身、今のスローライフ的休日のほうを好まれていらっしゃいますので、あまりハイテクノロジー化いたしますのも考え物でございますね。
そこでバオバブ様にお知恵を拝借いたしましたところ、お屋敷そのものよりも、お庭のほうを充実させてはとのことでございました。
確かに、例えば先日のように果樹などをたくさん植えれば、果実を使った保存食なども出来て冬支度にもなりますし、お嬢様の望まれるゆったりとした生活を実現して行けます。
流石はバオバブ様、樹齢数百年は伊達ではございません。
お礼に、毎日注入しておりますわたくしの魔力を、今回は増量いたしておきました。
さて、アドバイスも頂きましたことで、お庭に果樹を植えて参りましょう。
お屋敷の敷地内には、他の草花や樹木もまだ残っております。
お屋敷本体だけが綺麗に分解されたわけでございますので、お屋敷の跡地を使うことといたします。
野外コンサートホールもそこにございますが、こちらは一旦撤去いたしておきます。
植えましたものは、先日のリンゴの他には、イチジク、アンズ、スモモ、カリン、マルメロ、クリ、レモン、ブドウ、オリーブ、でございます。
いずれも苗、もしくは発芽すらしていない種でございますが、ここはまた小執事たちの出番でございます。
1本あたり3~4人の小執事を根元に立たせておきまして、わたくしはバオバブ様内部に戻りお茶でもやっつけております。
全然ひどくはございません。
彼らには、これがお嬢様のためであると申し添えてあります。
小執事たちは大喜びで直立不動の姿勢を取り、足先をちょっと地面に埋めて、そこから魔力を照射いたします。
これぞ執事魔法――
≪執事肥料≫!!
翌朝には、どの果樹も収穫可能になっております。
小執事は翌朝、ちゃんと懐に入れて回収いたします。
大切に扱えば、夜中にこっそり靴の修理もしてくれたりいたしますので。
まあ、わたくしの靴は履きながら足の指で修繕出来ますし、
お嬢様のお靴は触られませんけどね。




