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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
68/150

第68回 思い出話でございます (下)


「お嬢様は当時、小学校に上がる前でいらっしゃいました。そのため、わたくしにとっては幸いにも、お嬢様とご一緒のお時間はたっぷり取れました」


 日が落ちて参りましたので、皆様を正餐の会場へとご案内いたしました。

 ナチュラルお屋敷のすぐお隣にございます、わたくしがブロックを積み直して建造いたしました野外コンサートホールでございます。


 観客席最前列にお鍋がぐつぐつ煮えておりまして、『クラリオン風湯豆腐』がいい感じにあっつあつとなっております。

 肌寒い夕暮れには持ってこいの仕上がりでございます。


 会場へと移りまして、わたくしは一人舞台の上に立ちました。

 リアリティーとノスタルジーをお出しするため、薄い紙の幕の向こうから影絵劇とさせていただきます。




 お嬢様は、わたくしに懐かれてからというもの、よくわたくしの後をついて来られました。

 わたくしのお仕事には差し支えございません。

 わたくし、魔法が使えるようになっておりますので。


 日頃のお料理、お洗濯、お掃除も、お嬢様の身の回りの分は一瞬で終了いたします。

 帳簿の管理、備品の修繕や買い足しの手配なども、お嬢様がわたくしの周りをくるくると走ってらっしゃる間に完成いたします。


 お嬢様はいつも大はしゃぎで、わたくしのお仕事中の洗練された挙動をご覧になっては大笑いされます。


 ただ、ご来客の受付と応接に関しましては、流石にお嬢様の御前を辞することがございます。


 以前、旦那様の使者の方が近況のご報告にいらっしゃいました。

 その時はわたくしも話し込んでしまいまして、ついついお時間が経ってしまいました。


 お嬢様のお夕食は、お話しながらでも遠隔操作でちょいでございましたが、終わったころにはとっぷりと日も暮れてしまいました。


 わたくしが使者の方をお見送りしましてから玄関ホールに戻りました時、その石冷えのする空間にお嬢様がぽつんとお待ちになっていたのです。

 そして、お嬢様はわたくしにぎゅうっとしがみついて来られました。


 すると……




 皆様の見ておられる紙の幕に、ばっと鮮血が散りまして蝋燭が揺れました。




 いつものわたくしの鼻血落ち、わたくしの故郷にあります時代劇風の演出でございます。

ひとつ、人の世鼻血を噴き出し――

ふたつ、不埒な変態三昧。


みっつ、味噌をたっぷり効かせた、

おいしいお鍋の出来上がり、でございます。

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