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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
6/150

第6回 午後のお散歩でございます

 昼食後、お嬢様はおやつの前にお散歩に行きたいとおっしゃいました。

 わたくし、護衛のためにもお供をいたします。


 このお屋敷、避暑地に建っておりますが、真夏の午後の日差しが強い時間帯でございます。

 本来、お散歩には日傘が欠かせません。

 が、なにぶん、お嬢様がお持ちの高級日傘はいま、小姓たちの里帰り中のチャンバラごっこや虫取り用に、48本全て貸し出し中でございます。

 そのため、お嬢様を直射日光からお守りできるのは、わたくしだけでございます。


 お嬢様はただいま、袖のない真っ白なサマードレスをお召しになり、外出用の足首まで保護するサンダルをお履きになりました。

 そして、その月光を流したように滑らかに透き通る、真っ直ぐな金色のおぐしの上には、帽子が乗っておりません。


 ですが、ご心配には及びません。


 このようなこともあろうかと、わたくし、ご準備はいたしております。

 懐から、2メートル近くある竹竿を取り出しまして、それをわたくしの背中とジャケットのあいだに、横向きに渡します。

 竿の端にジャケットの隅を引っかけ、かかとを揃えて両手を広げます。


 あとは、お嬢様が玄関からお出になるタイミングで屋根から飛ぶだけです。

 これぞ執事魔法――


執事しつじ滑空グライダー≫!!


 わたくしの影がちょうどお嬢様にかかるよう調節いたしますので、お嬢様の小さなお身体には灼けつくような陽光が刺さることなど、全くございません。

 お嬢様は心置きなく、あっちへ行かれたりこっちへ戻られたり、そっちの辺りをくるくる回られたり、ご自由にお過ごしいただけます。


 なお、お嬢様が立ち止まられて虫や野花を眺めておられるときは、わたくし頑張ってホバリングいたします。

 ふんっ、ふんっ、と声がいたしますが、お嬢様は鳥の声と思われたようで幸いです。

「ねえ、サン。あの鳴き声は、なんていう鳥か知ってる?」


「お嬢様、あれはナンチャッテオオシツジガラスでございます」


「サンって物知りね。教えてくれて、ありがとう!」


「恐悦に存じます(鼻血)」

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