第56回 リフォームでございます
お嬢様の暴走した魔力が結界内に充満いたしまして、今にも割れそうな風船状態になりました。
このままですと、当然結界は耐え切れずに破裂いたします。
わたくし、お嬢様をさっと抱え上げまして、窓から絢爛に執事ジャンプいたしました。
星空の下、お屋敷の屋根を遥かに見下ろしながら一瞬の空中散歩。
お姫様抱っこの正しい使い方でございます。
ちなみにその一瞬後、お屋敷は轟音を立てて木っ端微塵に爆散しました。
「……さて。どこにもおられませんね」
明け方になりましてから、わたくし、本物のケイヴ様をお呼びしまして、お屋敷跡を積み木のようにひっくり返してみました。
ヌパン様の捜索のためでございます。
「あやつがこれしきのことでやられるとは、到底思えませんなぁ。執事殿、油断してはいけません。あやつはまた、必ずや現れますぞぉ」
ケイヴ様は、くたびれたコートを羽織って難しそうに呻られました。
後ろでは部下の方たちが走り回っておられます。
昨晩張り込んでいらっしゃった憲兵の方もご無事です。
このようなこともあろうかと、皆様の物々しい装備を、わたくしこっそり新聞紙で補強いたしておきましたので。
それで皆様お忙しそうでございますが、なにしろ、国に名だたる大貴族ルビンフォート家のお屋敷が全壊ともなりましたので、大騒ぎとなっております。
ですがわたくしからにとりましては、以前チラッと触れましたがリフォームのいい機会でございます。
そこの木陰で毛布にくるまっていらっしゃるお嬢様が起きられる前に済ませましょう。
まずはバオバブの種をその辺に埋めます。
大木に育つまで数百年ほど待ちまして、中をちょっとくり抜かせていただきます。
それで、数百年ほど経ったものが、予めこちらにご用意してございます。
これぞ執事魔法――
≪執事三分≫!!
サイズは前のお屋敷と比較いたしますと犬小屋同然でございますが、これもお嬢様のちょっとした憧れ、狭いながらも楽しい我が家、のファンタジックお屋敷でございます。
後はわたくしが体内に隠しておりました至宝の精霊石を取り出しまして落着でございます。
体内のどこに隠していたか、描写はいたしておりません。
特に気になさる方はおいでませんでしょうからね。
あと、この物語には過激なシーンはご法度でございますので。




