第55回 怪盗でございます (下)
長ーい廊下をわたくしが先導いたしております。
後ろでは、憲兵隊長のケイヴ様が、くたびれたコートを羽織って思案気なお顔をしておられます。
「いやぁしかし、嘘をついてあの怪盗めを出し抜かれるとは。執事殿も大した策士でございますなぁ」
「敵を欺くにはまず味方から、と申します。
ところで、ケイヴ様。
お嬢様のお部屋の周囲には、別の魔法結界がございます。魔力をシャットアウトする性質の紗幕でございまして、そのままお進みになりますと、
その二つに割れておいでの顎が一つに戻っておしまいになりますが」
ケイヴ様はそこで、はたと立ち止まられました。
「……サン殿。あなたは、いくつ嘘をついておられますか?」
その発せられた言葉は、ケイヴ様の野太い声ではございません。
「わたくし、お嬢様に対して、また、お嬢様に関することには、決して偽りを申しません」
ケイヴ様はお顔に手を当てられ、皮をはぎ取りました。
魔法で変身していました、好青年然としておりますヌパン様が正体を現しましてございます。
「已むを得ませんね。実力行使と行きましょう」
ヌパン様は爆発的な加速でのダッシュをお見せになりました。
わたくしの脚力をもちましても、追いつくには多少のお時間をいただきます。
……そこに。
「あら? お客様かしら。ご挨拶が遅レタスみません」
ヌパン様と楽しいひと時を過ごしておりましたところ、お部屋からフラリと出ておいでましたお嬢様の、白骨めいてゆきます今日この頃の寒~~~~~~いダジャレが響き渡りました。
魔力をシャットアウトする性質の紗幕はお嬢様の寒気を留め、屋内に猛嵐を起こしました。
もう少し、ごゆるりと鎌をおかけしてもよろしかったのですが、
なにぶん字数制げn
犯人を一刻も早く捕まえたいというわたくしの正義感が
ひとまずの決着へと駒を運ばせてございます。




