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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
50/150

第50回 台風でございます


 ベランダの鉢植えを屋内に入れておりますと、ハトが飛んで来ました。

 伝書バトでございます。

 お嬢様の通われています、王立魔法学校からでございます。


「お嬢様。台風のため、明日も学校はお休みとのことでございます」


「ホント? やったわ! ……って、私は喜んじゃいけないわね」


「左様でございます。明日は領地巡検、並びに台風お見舞いのご予定がございます」


「それなら、炊き出しもしなくちゃ。私、おにぎりいっぱい作るから」


「承知いたしました。そうおっしゃることと存じまして、既に大量のご飯を炊き終えております」


 お嬢様は、幼いながらも領地や領民をいつも気にかけて下さる、お優しい方でいらっしゃいます。


 わたくし、書類かばんより焼き海苔の束を、スーツケースより精製塩を、それぞれ取り出しまして、恭しく提出いたしました。

 海から離れたこの高原の避暑地ではいずれも高級品でございますが、わたくしの僅かなコネクションにより石ころと引き換えの入手でございました。



 さて、わたくしいよいよお嬢様のお部屋の窓の外に張り付いております。

 待ちに待ったこの瞬か……

 お屋敷を守る重要な任務に、身が引き締まります。


 見る見る空が暗くなりまして、ゴロゴロ空が鳴りだしましてザバザバ雨風がしぶきはじめました。

 ちょうどいい角度から、窓の補強材たるわたくしの目鼻に直撃でございます。


 お嬢様はお部屋の中で、雷におびえておへそを押さえつつ毛布をすっぽりかぶっていらっしゃいます。

 それを想うだけで、雨粒は極上の甘露、豪風は天上の美声にございます。

 時折、その歌声に乗って飛来するどこかの屋根瓦や看板がわたくしの顔面に吸い込まれますが、もはや女神の口づけに他なりません。


 お嬢様の、めそめそとすすり上げられる音やわたくしの名を弱々しくお呼びするお声が骨伝導で届きます。

 この時間が永久に続いて欲しくはございましたが、明け方には台風も終了いたしました。

この物語、早50回にもなりました。

ひとえに、いつも御覧下さる皆様のおかげでございます。


その記念と申すほどでもございませんが、作品タイトルを

『超人執事の変態日記』

から

『超人執事の変態日記でございます。』

に改めさせていただきます。

内容に変化はございません。



これからも執事としてより精進して参りますが、

もしリクエストなどございましたら、お気軽にお寄せ下さい。

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