第5回 お庭の手入れでございます
先ほどの果樹でございますが、枝がやや茂り気味なのが気になりまして。
わたくし、ただいまお庭に出ております。
本来、庭仕事は庭師たちの業務でございます。
が、なにぶん、庭師たちはいま、一人残らず温泉旅行に出かけております。
そのため、庭木を切れるのは、わたくしだけでございます。
樹木の剪定におきましては、枝を短くするのが『切り詰め』、断面から枝が茂ります。
対して枝を根元から落とすのが『間引き』、残った枝に養分が集まって伸びます。
それは大切でございますが、わたくし、はさみを持っておりません。
ですので、切るのではなく、枝のほうに縮んでいただきましょう。
片膝をつき、両手を地面に触れます。
意識を集中いたします。
これぞ執事魔法――
≪執事対話≫!!
余計な枝が、動画の早戻しのように、スルスルと縮んでゆきます。
あっという間に、さっぱりいたしました。
すると、木に回収された枝の養分が実のほうに回り、大きなベリーの実が次々と生りだしました。
粒の一つ一つが巨峰のようでございます。
午後のおやつは、ブラックベリー尽くしになることが決定いたしました。
いまのうちに、タルトを作っておきましょう。
わたくし、懐から取り出しましたお皿に実を山盛りに乗せ、上からドームカバーをそっとかぶせました。
お屋敷に戻るあいだに完成いたします。
わたくしの作るお料理に関しまして、お嬢様は毎回必ずご感想を下さいます。
こちらからご催促申し上げるわけには参りませんが、
ご感想をいただけると、やはりとても嬉しいものでございますね。ちらっ。




