第47回 進路相談でございます
「左様でございます。ポイニークーン家より留学なされておいでの。はい、お嬢様ともすっかり仲良しでございます。わたくし、ジェラシーの余りハンケチーフを噛んでうぎぎーとしない日はございません」
わたくし、水晶の向こうの旦那様にご連絡申し上げております。
「はい、当然ですが白でございます。意外でございましょうか」
わたくし、水晶の向こうで寒そうにお手を擦り合わせていらっしゃる旦那様の前で卓上マナコンロを置きまして、クラリオン風すき焼きをぐつぐつ煮ております。
「エヴァーウッド家に関しましても同様でございます。そこはどうかご安心下さい」
わたくし、柔らかく煮上がりました極厚豚バラ肉をフォークで取りまして、そーっと水晶に近付けてからひょいと翻してわたくしの口に入れましたところで通話が切れました。
それはさて置き、中庭を発ちましてお嬢様のところへ参ります。
学校には、教師が生徒と会話をするための指導室がございます。
主に、悪さをした生徒を叱りつけるために使用されたりしますが、今回はそうではございません。
「サン。私、どうしたらいいのかな? 今のまんまじゃ、立派なレディーになれる気がしないの。貴族の責務だって、果たせそうにないわ」
わたくし、軽くうなずきますと、お嬢様のかけていらっしゃるお椅子をくるりと回しました。
「お肩をお叩きいたしましょう」
「別に肩なんて凝ってないわ」
「いいえ、お嬢様。ガチガチでいらっしゃいます。ルビンフォート家はクラリオンでも指折りの名家ではございますが、10歳の女の子に無理難題を押し付ける慣例はございません。もっとお気軽に、ちょうど今のアップの髪型にされた時のお気持ちのままでおいで下さい」
そう申しながら、わたくし鼻血の他に大量の吐血と全身の毛穴より噴血いたしました。
お嬢様に叩かれるのは至高でございますが、逆は大ダメージでございます。
お肩はお揉みしましてもよろしゅうございましたが、
わたくしがそれをいたしますと、何故だか逮捕される気がいたしました。
わたくし、これっぽっちもやましい気持ちはございませんが。




