第37回 哀しみに染まりし漆黒の堕天使でございます
この王立魔法学校は、お昼休みの後で、生徒たちによるお掃除タイムがございます。
王侯貴族の子女も多く通う学校としましては、なかなか珍しいルールと存じます。
わたくし、お屋敷のほうと並行いたしまして学校のお仕事もございますが、1週間後までの授業のご用意は給食がてら済ませてございます。
ので現在、わたくし、暇を持て余しております。
お掃除を頑張る皆様へ、チアガールの恰好でエールをお送りいたしましてもよろしいのですが、ここは執事らしく、お掃除をお手伝いいたしましょう。
指を立てまして、意識を集中いたします。
指先に初等部の校舎中の埃が集まって参りました。
真っ黒の塊を目にした生徒の方々が走って来まして、おおーと歓声を上げられました。
人だかりの後ろで、お嬢様がふふーんとしたり顔をなさっておられます。
ウルトラ可愛らしゅうございましたので、わたくしも多少格好つけたくなりました。
「ぬうぅん! でございます」
吾が裂爪に陰惨と燈りし闇夜の凝り、暗黒の雷を纏いて塵芥と帰すべし。
「はぁっ! でございます」
要約いたしますと、指先の埃の塊がバリッと静電気を発しまして、周りの皆様の制服の汚れも吸着いたしました。
それを窓からぴょいっと浮かせまして、指パッチンで時空の扉を開き中に片づけます。
これぞ執事魔法――
≪執事洗濯≫!!
まあ、職員室前の廊下はほぼ手を付けるまでもございませんでした。
大はしゃぎの皆様の意識の隙を突きまして、向こうにいらっしゃるお嬢様へお手紙を滑らせます。
『放課後、体育館の裏でお待ちいたしております。 貴女の執事より』
吾が天地の翼、其の狭間に揺蕩うは龍の息吹か、或いは怨霊の蠢きか。
矮小にして果敢なる神木の仔よ、邪を打ち払い闇を薙げ。
↓意訳でございます。
何やら背中がかゆくなって参りました。
孫の手がございますので掻きましょう。




