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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
35/150

第35回 教師でございます


 わたくし、教師でございます。

 本日2時限目に魔法科学の授業がございまして、そちらを担当いたしております。


「空気中や地面など、身の回りの様々なところに、マナという目に見えない物質があります。息をしたり、食事をしたりすると、マナは身体の中に少しずつ吸収されまして、私たちが魔法を使うための力、魔力になります」


 生徒の皆様は興味津々でわたくしの授業を聞いて下さいます。

 お嬢様も、お口を小さく三角形に開けられまして、熱心にノートを取っておられます。


「魔力は、私たちの身体の成長にそって、ゆっくりと増えていきます。今のところは魔法を使うのが苦手だという方でも、大人になると魔力をたくさん持てるようになって、得意になることもありますよ」


 中にはお嬢様のように特異体質で、魔力の量は膨大ですが発動のトリガーが特殊、という方も極まれにしょっちゅうおいでます。


「魔力を量るための、簡単で安全な方法もあります。今、皆様にお配りした紙風船、もう膨らませましたね。それを両手の上に乗せてみて下さい」


 魔力計量用の紙で出来ておりますその風船、両手から照射される魔力に反応いたしましてふわりと浮きます。

 皆様からは歓声が上がりました。


「毎月の発育測定では、魔力がいっぱいのときの量が分かりますね。その紙風船では、浮いている高さと時間で、一度に使える魔力の強さと量が分かります」


 皆様がはしゃぎながら定規を当てたり、口で数えながら競争している横で、お嬢様の紙風船はちょっぴり浮いては落ち、またちょっぴり浮いては落ちております。


 実践魔法コースでは、筆記試験に通ればひとまず落第はありませんが、こういった実験で後れを取りますと、何よりも日々の学校生活をお楽しみいただきにくいことと存じます。


 従いましてお嬢様には、


 放課後、


 無人の教室で、


 二人っきりの、


 個人レッスンが、


 必要でございます。


 と、わたくしが特大ハンケチーフを軽やかに駆使しておりますと、風船の割れる音がいたしました。

通常の紙風船でも似たようなことが可能でございます。

ただ、その測定方法では、下からあおいだり手首のスナップでこっそり投げ上げたり、

更にはちり紙で風船を作って重量をごまかしたりと、

そういったズルがございましたので、現在は専用の風船が使用されております。

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