第28回 登校のご準備でございます
お嬢様の寄宿舎に持ち込まれる品々は、わたくしの頭の上に積み上げます。
そのままぶ厚くて重たーいドアを開き、魔法陣の描いてあるお部屋に入ります。
「では、お嬢様。これよりお荷物を転送いたしますので、もう少し後ろにお下がり下さい」
お嬢様は、ちょっと緊張なさっておられるようで、ごくりと唾を飲み込まれました。
その気持ちこわ張ったお肩、猫じゃらしか何かでこちょこちょいたしとうございます。
「ねえ、サン。わざわざここから転送魔法を使わなくても、あなたなら簡単に送れるのではないの?」
「わたくしの空間転移魔法のことでございますね。憶えていていただき、ありがとうございます。理由はいくつかございますが、ただいまより執り行います立方転送は、個人の使用する魔法と異なりまして、いわゆる、ちゃんとした手続きを踏んだ魔法でございます。正規の郵便として認められますので、お荷物の安全保障が付いて参ります」
「別に、こんな大掛かりなのじゃなくても、サンがしてくれるなら疑わないのに……」
お嬢様の呟かれたお言葉は、聞こえない振りをいたしました。
もう一つの理由は、この魔法は正確無比で安全確実な代わりに、費用として莫大な魔力を使います。
「座標指定、範囲設定。立方転送、即時執行」
久しぶりに、普通の魔法を使用いたしました。
「じゃあ、サン。もう1回、私とかくれんぼしよ? 今度はもっと見つかりにくいところに行くから!」
お嬢様はそうおっしゃるや、転送室からぱたぱたと駆け出されました。
私の魔力切れを見越してのこととご推察申し上げます。
が。
更にもう一つの理由としまして、今回の消費魔力はお嬢様持ちでございますので。
もちろん、ケチったわけではなく、お嬢様の魔力暴走の予防のためでございます。
当然のようにかくれんぼにボロ負けなさって、
「なんで!?」とおっしゃらんばかりのお嬢様のお顔、
次いで魔力を消耗されて「ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかしら。なんだか疲れた……」と
汗ばんで上気なさっているお嬢様のお顔。
わたくしのメインディッシュとデザートでございます。
あとは仙人のように霞でも吸えば栄養十分でございます。




