第24回 感謝の在庫一斉処分でございます
昨日、入手いたしましたオオウシカバサイでございますが、お肉をその場でいただいたりソーセージとして保存いたしました分以外にも、残っている物がございます。
皮や骨、毛や角といった、可食部でないところでございます。
これらの部分は、領内の村落に提供するのがここでの通例となっております。
そもそも、貴族のおこなう狩りとは、面白半分の動物虐待などといった低俗なものでは断じてございません。
れっきとした食料調達であり、領内警視であり、治安維持であり、領民との親睦であります。
貴族の義務として、領地の皆さんに安全かつ豊かに生活していただけることを示す、パフォーマンスに実益が合わさったものでございます。
そういうわけでございまして、本日、朝からお嬢様は鼻歌混じりに荷車をお引きになり、猛獣の毛皮などをお運びに近くの村の公民館に向かわれていらっしゃいます。
トモミ様もご一緒なさっておいでです。
普段、こういった奉仕活動はあまりなさらないそうで、新鮮なお気持ちでお手伝いを買って出て下さいました。
例によりまして、馬車も馬も御者も留守にしておりますので、今回は荷車なわけでございますが。
本来、荷車には車輪あってこそでございます。
が、なにぶん、車輪と車軸は昨晩のバーベキューの折、ドネルケバブを焼く回転台として使用しておりまして、ちょっといい匂いが残っております。
そのため、荷車の下に横たわり、ごろごろ転がって荷物を運ぶことができるのは、わたくしだけでございます。
ついでに整地もおこなっております。
舗装の甘いところを平らにならし、片っ端から凹凸を滑らかにして参ります。
セルフサスペンション機能を搭載いたしておりますのでご移動の際の衝撃はわたくしが身をもって全て吸収、お嬢様は普通に歩かれるよりも遥かに楽ちんでございます。
これぞ執事魔法――
≪執事働車≫!!
領内のインフラ整備をも自ら行われるとは、お嬢様は貴族の鑑でいらっしゃいます。
時間、でございますか。
わたくし、お嬢様と共におりますと充実感のあまり、
時間はあっと言う間に過ぎてしまいがちでございますが、
そこをぐっと我慢いたしまして、ほぼ停止状態にまで圧縮することもございます。
……しかし、なぜそのようなことをお気になさるのでございましょう。




